人嫌い、試合観戦へ

その日は、朝からインターホンがうるさかった。


「はい、どちら様」


「遅い。」


「勧誘は結構なので。」


見間違いとして秀人は、そっとドアを閉じようとした。それも叶わず、ドアに足を差し込まれ閉めれない秀人。目の前には、今日が本番の林が立っていた。


「おは。」


「会場入りしなくていいの?」


「これから。」


「まあ…まだ朝の6時だからね。」


今は早朝とも言える朝6時。外を見れば、少し早く出勤する会社員の姿しかない。彼らに夏休みはないのだから。


「秀人。」


「何かな。」


「来る?」


「一応行く予定だよ。うん…きっとね。」


「必ず。」


「必ずと言い切って、裏切ってしまった場合心が痛くなるんだ。僕としては、行けるかもまでに止めておくよ。」


「駄目、来る。」


「そうは言ってもね。こればかりは個人の自由、まあ約束されちゃったし行くつもりはあるさ。」


「本当?」


「やれるだけやるさ。」


「心配。」


そう言って、林は体をずらす。そこには何故か心愛がいた。


「やっほー秀人ー。」


「…何のつもりかな。」


「監視。」


「ウチもー今日行くからー秀人役になったよー。」


「秀人役とは。」


「連行。」


「言い方が悪いよーりんりんー。秀人がーちゃんとするかー見るんだよねー。」


「ねー。」


「…仲良いね君たち」


「とー言うわけでーちょっとの間よろー。」


「よろー。」


「つまりあれかな。僕一人だと不安で、彼女がいると安心して試合に行けると。」


「正解。」


「ウチからもーお願いー。ちゃんとー朝ごはんー作るからさー。」


「みゃー。」


「タマ来る?」


「動物入っていいの?」


「来るなら。」


「いやーキツいとー思うけどー。」


「タマ、今日出掛けるかい?」


「みゃー。」


「…タマは無視できないか、じゃあ行くよ。」


「秀人はータマちゃんにー甘いよねー。」


「甘甘。」


「うるさいな。」


「じゃあ行く。」


「頑張れーお弁当作ってくねー。」


林が去り、開いたドアから心愛は秀人家へ侵入を果たした。


「え、帰らないの?」


「秀人のご飯にーりんりんのお弁当ー作らないとねー。」


「ああそうですか。僕は向こうで着替えるから、ほっといてね。」


「みゃー。」


「タマのご飯、上の棚から出して上げて。」


「はーい。」


普段使われないキッチンに立ち、心愛が本当に作る気だと分かった秀人は諦めて着替えることに。


「うわースリムだねー。」


「覗く必要あった?」


「違うよー冷蔵庫の中身ー使ってもいいー?」


「良いけど、ろくなものないよ。」


「ありがとねー。」


秀人の冷蔵庫と言えば、朝に食べるパンやら乗せるハム、たまに使うチーズが常駐している。他に思い付くのは飲み物や、作ろうと買ってきたが使われなかった材料等だ。一人調理をしようと思い買うが、思ったよりやる気が出ずカップ麺で済ます日もある。


「みゃー。」


「あれ、もう食べ終わったの?」


「みゃー。」


「僕ももうすぐだから、向こうで変な人と遊んできたら。」


「変な人ー?」


「自覚なしね。」


着替え終わった秀人がリビングへ戻ると、一人では絶対に作らない料理ばかりが並んでいた。


「えへへー頑張ったよー。」


「いただきます。」


「えー?作れたんだーとかーおいしそーは無いのー?」


「寄り道で働いてる時点で、最低限学んでると思ったけど。僕が働く前は店長と2人、つまり店長が表にいれば厨房は君だろ。」


「なんかー悔しいー。」


「はいはい。」


「みゃー。」


「あれ、タマ食べてなかったの?」


「ご飯はー秀人と一緒だってー。」


「まるで言葉が分かるみたいだね。」


「見てればー分かるってー。」


「へー。」


「みゃー。」


「それじゃーいただきまーす。」


3人で朝ごはんを食べ、いよいよ秀人は出掛ける事にした。

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