人嫌い、暑さにイラつく

「何なんだこの暑さは…」


「…溶けそう。」


夏休みも迫る7月中旬、猛暑が日本を襲っていた。もちろん8月が本番なのは知っているが、暑さは耐えがたいものである。


「おはようございます先生!」


「こんな暑い日も元気だね。」


「…おは。」


「いやー夏ですね!この暑さだと熱中症も怖いですよ!」


「確かに。」


「…林は…平気?」


「平気。」


「いつの間にいたのさ。」


「そういえば、今日は岸辺さんいないんですね!」


「あれ?そういえば見てないや。」


「…言われて…気づいた。」


「薄い。」


「夏風邪ですかね!」


「まあ休みなら、この後先生が言うでしょ。」


「…お見舞い?」


「あり。」


「まあこの話は後で!そろそろ始業ですので、失礼します!」


「また。」


「はいはい。」


そして授業が始まる。幸いこの学校にはクーラーが設置され、夏には稼働する。


「…涼しい。」


「これで冷房無かったら、授業なんて頭に入らないからね。」


こうして午前中の授業が終わると、秀人と麗華はスマホを取り出す。


麗華[今日外で食べるのは暑いですね。]


大山[どうしましょうか!]


彩花[今日は各自で?]


林[寂しい。]


正子[もし良ければ生徒会室があるぞ。]


麗華[いいんですか?]


正子[昼間は特に使わないんだ。空き教室と変わらない。]


秀人[職権乱用かと。]


大山[しかし普段入れない場所だと、興味があります!]


林[確かに。]


想汰[誰か今日の授業内容教えて。]


秀人[生きてた。]


麗華[大丈夫?]


正子[どうした?今日は岸辺くん休みなのか。]


彩花[あらそうなの。]


林[平気?]


大山[やはり夏風邪ですか!]


想汰[そう。]


麗華[お見舞いはいる?]


想汰[すぐ治りそう、明日には行けるから。]


正子[そうか、無理は駄目だからな。]


麗華[それじゃあ生徒会室お邪魔します。]


大山[急ぎ向かいます!]


林[すぐに。]


想汰への心配もそこそこに、麗華はメッセージを止め生徒会室へ向かう。隣にいたはずの秀人は消えていて、こうなると見つけるのは不可能と判断した。


「…今日は…見逃そう。」


着いてみればすでに大山や林、彩花は中で食べ始めていた。正子は会長椅子に座っていた。


「どうも麗華さん!先生は?」


「…消えた。」


「彼ならやりそうね。」


「まあ高山くんなら、やっても不思議ではないな。」


「探す?」


「…多分…無理。」


「前回の本気を見れば分かりますね!」


「彼を探してたら、昼休みが終わってしまうわ。」


「了解。」


「まあ食べようじゃないか。」


秀人の事は諦め、5人で食べ始めた。秀人がいないときも増えてきて、ここに想汰がいればいつものメンバーだった。


「岸辺くんは平気だろうか。」


「風邪。」


「この時期の風邪は厄介ですよね!」


「…明日には…来れるとか。」


「本人が平気って言ってしまえば、それ以上は踏み込めないわね。」


「そういえば!海の家バイトが楽しみですね!」


「私は来年受験だ。楽しめる最後の機会かもな。」


「海。」


「…日焼け…気をつけないと。」


「何日か滞在するのよね?ちゃんと準備しないと、向こうで困りそうだわ。」


「秀人は?」


「あー…先生は行くと明言してないですね!」


「高山くんの事だ。私たちを参加させて人手を確保、自分は要らないと言い出すだろう。」


「…先輩も…分かってきた。」


「ふふん、そうだろう?」


「でも不思議と、彼が逃げ切れるイメージがつかないのよね。」


「何故?」


「…秀人…最後には…やらされる。」


「拒否が強いのですが、最後には解決してくれます!」


「まあ解決方法に難ありだが、彼なりに精一杯やってくれる。」


「把握。」


「…でも…家にいたら…出てこない。」


「さすがに無理矢理は、先生も容赦しないでしょうし…どうすれば良いんでしょう!」


「不明。」


「まあ今悩んでも始まらない。」


「そうね。悪かったわ、こんな話題を作ってしまって。」


「姫野くんだけじゃないさ。この場にいる人は、それに悩んでいたはずだ。秀人くんは私たちの…いや、私たちを繋げてくれた人だからな。」


「…秀人は…1人が…好き。」


「夏の海は人が多いですから!先生にとって最悪でしょうね!」


「高山くんにできる、人との会話が少ない仕事は…」


「レンタル。」


「…それなら…確かに。」


「用意して渡すだけですからね!」


「まあ他に比べたら、人との接触は少ないわね。」


「…月宮さんに…相談。」


「早めに決めれたら良いですね!」


昼休みは終わり、麗華が教室に戻る。秀人は自分の席に座って本を読んでいた。


「…いた。」


「そりゃいるさ、早退する訳でもないし。」


「…どこに?」


「みんなが生徒会室にいるから、僕はいつも通りベンチで食べてたよ。暑かったけど、1人になれて最高さ。」


「…裏を…かかれた。」


秀人は笑顔だった。

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