人嫌い、主張する

「で?空き教室に僕を連れ込んで、何をするのかな。」


「…ろくでもないって決めつけたのは悪かった、謝る。それでもだ、お前が姫野さん達にいい影響になるとは思えない。」


「どうして彼女達を気にするのさ。もしかして好きなの?なら適当に付き合って、僕から離してくれると助かるよ。」


「同じ三年間を過ごす仲間を、お前みたいなのに壊されたくないんだ。」


「仲間ね…僕はその中から外れるよ。これで問題は解決!さて、昼の約束があるからじゃあね。」


さっさと帰ろうとする秀人を制止する正人。少し睨み合いもあり、正人は話す。


「はっきり言うが、お前がいると輪が乱れると思う。だから行かない方が、みんなのためだろ。」


「みんなみんな…僕は可哀想じゃないの?せっかくのご飯も食べれず、1人盛り上がってる馬鹿に脅されてるのに。」


「さっき秀人って呼ばれてたよな…思い出したぞ。お前、問題を起こして1ヶ月停学だった奴だろ。」


「停学は違うね。あれは休学だよ。」


「どっちでもいい!そんだけ休まされるってことは、よほどの事をしたに違いない。そんな奴が、いいやつな訳ない。」


「事の顛末は確認した方がいいよ?今の君、すごく間抜けに見えるから。それとも学校側が気を使って、詳しく書かなかったのかな。」


「それにその態度だ。なんで常に人を馬鹿にして、見下したような態度なんだ。」


「そう思ってるから、行動にも出るんだよ。」


「…あれか?友達ができなくてひねくれたか?そんなんじゃ一生1人だぞ。」


「それはいいことを聞いたよ!なら僕は、この態度で人生を謳歌させてもらうさ。」


その瞬間、正人は我慢が限界に達した。目の前のいかれ野郎に一発入れないと、虫が収まらなかった。

正人は普段から荒い男ではない。誰にでも平等に接し、クラスとの繋がりを大事にする。秀人の正反対のような性格だった。人は誰しもが繋がり助け合うものだと、疑うことはなかった。


「おっと危ないな壊すよ?」


「ってえな。」


気づけば顔を殴ろうとしていた正人。しかしその腕をとり、間接を決めた秀人は力を入れながら話す。


「これが君の本性かな?言うこと聞かない奴には、暴力で従わせるわけだ。」


「離せよ!」


「離さないさ。これを離したら、またやるかもしれない。それならいっそ、使い物にならなくするってのはどうかな?」


その瞬間、正人の腕に激しい痛みが走る。秀人が腕を折ろうと本気で力をかけたからだ。


「もう殴らねえから!やめてくれ!」


「信じられない。」


「本当だ!破ったら今度こそ折られても文句はない!」


「…ちっ。楽しかったのに。」


掴んでいた腕を離す秀人。痛みに顔を歪めながら、正人は続ける。


「喧嘩なれてるのか?」


「君の言うこの態度は、敵が多くてね。そのたびに暴力に負けてたら、自分が情けないだろ?」


「じゃあその態度をやめろよ。」


「それは僕に死ねって言うのと同じさ。どうやら、根本的に考えが違うらしい。」


秀人は空いたクラスの黒板を使い、自分の主張を書き出した。


「まず第一に、僕は1人で生きていき死にたい。他人との関わりなんてごめんだ。」


秀人は話す。今の繋がりは望んだものじゃなく、勝手に出来上がった迷惑な代物だと。


「次に、僕にとって人間とは醜く、触れたくも会話もしたくない。」


人は妬みや憎しみ、それらを押し殺して生きる醜い物だと。


「そして最後に、仲良くしろだなんて反吐が出る言葉はやめてほしい。」


人は一人、誰と繋がることもなく生きていくと。


「…それがお前の考え方か。」


「まあね。人生一人楽しく生きていきたいよ。」


「悲しくないのか?周りに誰もいない、寂しい人生を。」


「だからそこが違うのさ。寂しいだなんて、僕は一言も言ってないよ。勝手に決めつけて、押し付けてるのは君だ。」


「今の繋がりはいらないって?」


「欲しくもなかったよ。それなのに、気づいたらこの有り様。毎日が振り回されて、僕のお一人様はめちゃくちゃさ。」


「なんでそう言うんだ!持てない奴だっているのに、どうしてお前なんかが!」


「知らないよ。それを僕にぶつけたところで、解答が出るわけない。」


「…これで終わりにする。今の繋がりって奴を、今後お前はどうするんだ。」


「抜けれるタイミングがあったら、すぐにでも1人に戻るさ。それまでは人付き合いの練習として、嫌々のるつもりだよ。」


「つまり、悪いことはしないんだな?」


「君みたいな面倒事を持ち込むタイプが来なきゃ、僕だってなにもしないさ。来るなら全力で潰すけど。」


「…やっぱりお前は嫌な奴だ。それを知ってて、姫野さん達は一緒にいるんだな?」


「常日頃、君に対する態度と同じことをしてるけど。なかなか効かなくて。」


「分かった…もう何も言わないさ。付き合わせて悪かったな。」


「本心はそう思ってなさそうだけど、謝罪は受け取るよ。でも今後絡まないでくれると、すごく嬉しいけどね。」


教室を出ていく秀人。正人は一人、考える。


「…そういう奴もいるって、飲み込むしかないよな。」


これを機に、人にはタイプがあることを学んだ正人だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る