人嫌い、敵視される

正子[テストお疲れ様。ごはん食べる人?]


麗華[これから1ー3で勉強します。]


大山[昼食はどうしましょうか!]


秀人[一回外で買ってくるか食べるか。]


彩花[少し歩けばファミレスがあるわ。]


想汰[外に出て戻る分には何も言われないと思う。]


正子[では正門で集まろう。]


キズナ上での会話により、勉強前に集まることになった。このとき秀人は直接あって話さない分、端末でのやり取りは画期的だと驚いていた。


「何てことだ…顔を合わせないだけでこんなにも違うなんて。」


「…どしたの?」


「いや。携帯でのやり取りは、想像よりストレスが少なくてね。これからは話しかけられても、キズナで返そうかと思ってるところだよ。」


「…それは…やだ。」


「君の意見と僕の意見、噛み合うはずもないか。」


「…それと…スマホ。」


「呼び方は何でもいいさ。僕が分かればね。」


「と、とりあえず行こうよ。」


想汰に言われ、ひとまず議論を終える秀人達。窓から見れば正門前に正子や大山は集まっているようだった。


「待たせると怖いし、行くよ。」


「…遅れるの…だめ。」


「せ、生徒会長を待たせるなんて…想像もできないよ。」


秀人達がクラスから出ると、廊下を歩いている彩花を見つけた。もちろん秀人は声もかけず正門へ行き、他二人は無視することはなかった。


「…おつ。」


「ど、どうだった?」


「あら奇遇ね…高山くんは?」


「…あれ?」


「う、後ろにいたはずなのに。」


「まあ、彼が人と一緒にいこうなんて言わないわ。きっと1人で向かったのよ。」


「…相変わらず…秀人は…秀人。」


「こ、ここまでくると称賛だよ。」


「さて。待たせても悪いし、私たちも行きましょ。」


「おっ、いたいた。おーい姫野さん。」


「…確か同じクラスよね。」


「…知らない…人。」


「え、えっと4組の正部正人まさべただひとくんだっけ。」


「あれ、俺のこと知ってた?」


「は、話には聞いたよ。サッカー部で早くに実力を発揮してる、モテ男だってね。」


「そうなの?有名人だったのね。」


「実力者ってのは嬉しいけど…モテ男?全然モテないって。」


「ど、鈍感…これで難聴なら主人公じゃないか。」


「…何の…話?」


「い、いや!気にしないで!ただの非モテによる妬みだから…」


「それで、何か用かしら。」


「そうだった!はいこれ、理科のノート。何でも苦手教科で、他クラスから借りれなかったんだろ?困ってると思ってさ。」


「…どこで…聞いたの。」


「クラスの奴が、3組で話してるのを見たってさ。」


「朝の会話が聞かれたのね。」


「そ、そして助けに来たと。」


「そんな大層なことじゃないさ!クラスメイトが困ってたら、助け合わないと。」


「ありがたいけど、その件は解決したの。もう借りる必要は無くなったわ。」


「…そうなの?」


「…これから…勉強会。」


「と、というわけで…僕たちはこれで。」


「そっか…良かった。姫野さん、クラスであまり関わりがないから1人で悩んでたらって…でも他のクラスに友達がいたんだ。」


「まあ…そうね。友達ができたの。」


「…照れる。」


「ねえ何やってるの、遅くない?」


彩花達が正人と話していると、待たされてイラついた様子の秀人がやってきた。


「先輩も待ってるし、僕としてはこうも待たされると帰りたくなるんだよね。」


「遅れてごめんなさい。すぐ行こうとしたら、彼と話すことになったの。」


「…めんご。」


「す、すぐ行くつもりだったんだよ。」


「本当に悪い!俺が引き留めただけなんだ…怒らないでやってくれ。」


「はあ。何処の何様か知らないけど、僕は怒ってる訳じゃない。何をたらたらしてるんだって言いに来ただけさ。」


「それは怒ってるに入るわよ。」


「おい。言い方が失礼だろ!俺が悪いって言ってるんだ。女子に対してそんなに攻撃的になるなよ。」


「ぼ、僕は男だからね…言わなくても分かるか。」


「言い方?君は失礼なことをした相手に、わざわざ丁寧語を使うのかな?それに攻撃的だなんて、こんなのおふざけレベルだよ。」


「なんなんだよお前。姫野さん、まさか勉強会にはこいつも?」


「そうよ。理科も彼に教えてもらうの。」


「ノートを貸すだけじゃないの。」


「あら、見るのと教えてもらうのとは違うって、朝伝えたはずよ。」


「…言ってた。」


「ちっ、うまくのせられたか。」


「…なあ姫野さん。今からでも俺のノートで、なんなら俺が教えるから行くのはやめないか?」


「お、彼が魅力的な提案をしてるね。どうぞどうぞ。」


「どうしてそう言うのか、理由を教えて?」


「じゃあ言うけど、この男はろくでもない奴だ!少ししか話してないけど、どこか馬鹿にした態度だし配慮もない。」


「ろくでなしときたね。まあ馬鹿にしてるのは認めるよ。君みたいな奴の相手をしてると、貴重な時間が減るからね。」


「…お前名前は?」


「言うわけないだろ。どうせ調べてクラスに乗り込んで、今みたいな臭い正義を振りかざすに決まってる。先に言っておくけど、これは僕の生き方だから何を言われても曲がらないね。」


「…秀人…どうどう。」


「あ、あの…先に会長のところ行ってるね!」


「逃げたわ…ねえ高山くん。今は優先すべきことが他にあるわ。」


「分かってるよ。でも僕を間違いだって言う彼の主張も、少し気になるからね。なんだったら先に食べててよ。彼は僕を逃がさないらしい。」


「当たり前だ。お前みたいな奴、姫野さん達と一緒にいたらろくなことにならない。」


「そこまで言い切れるの?」


「…秀人…悪くない。」


「麗華さん、先に行きましょう。高山くんも無理はしないでね。」


「ほどほどに潰すよ。」


「今なら俺のクラスが空いてる。来い。」


「うわー怖いね。財布を出した方がいいかな?」


「本当にムカつく奴だ…。」


秀人は昼飯を諦め、目の前の男をどう潰そうか考え始めた。

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