人嫌い、テストに挑む

「いよいよ中間テストですね!」


「み、みんな自身ある?僕は落としそうで…」


「…ぶい。」


「勉強に不安はないね。」


5月、入学して一ヶ月と言うときにやってくるのが中間テストである。内容としては少ないが、最初でつまずくと引きずるものだ。


「にしても、たった5教科を2日でなんてね。」


「ですが助かります!1日通しだと、頭が痛くなりますので!」


「きょ、今日は国語に数学だっけ。」


「…明日が…大変。」


「そうかな?僕としては、数学が苦手だから今日が終われば安心だよ。」


「なるほど、先生は文系ですね!自分は英語が怖いです!」


「しゃ、社会以外なら…早く日本地図覚えないと。」


「…国語。」


「見事にバラバラみたいだね。」


「朝から賑やかね。」


教室でテスト談義をしていた秀人達のところに、珍しく彩花が訪れた。


「…どしたの?」


「お邪魔するわ。誰か理科のノートを借りれるかしら?以前休んでしまった内容が、どうも明日のテストで大きい点らしいの。」


「クラスで借りたら?」


「あなた達なら、恩だのお返しだの気にしなくて良いじゃない。」


「ま、まあ要求はしないよ。」


「自慢じゃないですが、自分のノートは汚いので…読めないかと!」


「…ノート…とらない。」


「つまり僕か彼だね。ノートは貸すから、好きにして。」


「ありがとう。あなたは明日の勉強、しなくていいの?」


「理科なら教科書読んで、理解を深めれば平均はとれるさ。」


「じゃ、じゃあお言葉に甘えて、僕は自分の勉強に使うよ。」


「…放課後…勉強会…する?」


「え。」


「それは助かります!自分だけだと、サボってしまいそうですし!」


「だ、誰か地名の覚え方知らない?教えてもらえると助かるな~。」


「放課後集まるの?なら、ノートは借りなくても良さそうね。」


「…僕は明日の勉強が。」


「…秀人…数学以外…大丈夫。」


「いや僕がいたところでどうにも、ノートは貸すけどさ。」


「見て学ぶのと、教えてもらいながらとは違うわ。」


「場所はどうしましょうか!」


「きょ、教室で良いんじゃないかな。下校時間までは空いてるらしいから。」


「…おけ。」


「あー…はいはい。僕も端で勉強してるから。邪魔はしないでよ。」


流れで決まった居残り勉強会。まずはテストを乗りきることができるか、各自自分の席・クラスに戻り鉛筆等の準備をする。


「よーしホームルームだ。一旦勉強の手を止めろ、今見たって付け焼き刃だぞ。」


生徒達は広げていた教科書やノートを閉じ、畑山の方を見る。畑山からは今日の流れと放課後の教室解放、聞きたいことがあれば職員室に来いとの話で終わった。


「じゃあ準備しとけよ。」


畑山が出ていったのを確認して、すぐにノートを見る生徒が何人かいたが、おそらく本番では出てこないだろう。当日の勉強でたまたま正解したとして、知識として残ることは少ない。

先ほど畑山が言ったように付け焼き刃。もろく折れやすい刃は、テストが終われば朽ちていくだけだから。


「…国語…不安。」


「何が不安なのさ。答えは全部文章にあるし、感じは常用漢字でしょ?」


「…人の…気持ちとか…感情…苦手。」


「あー言えてるね。僕の嫌そうな顔とか見ても、平気で話してくる今とか。僕の感情分かる?」


「…めんどい?」


「分かるじゃないか。その調子で頑張ってね。」


「…ちゃんと…放課後…いる?」


「勉強はしないとね。早く家に帰って1人もいいけど、いやそれが最高だけども。」


「…頑張ろ。」


「別に数学以外なら、平均とれるんだけどね。」


「…スマホ…切った?」


「テストで鳴らすのは不味いからね。帰るだけと思ってたから、家に置いてきたよ。」


「…なる。」


「よーし、テスト始めるぞ。机の物しまわないとカンニングにするからな。」


畑山の声かけでテストが始まる。

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