一方その頃

「ウィル、そろそろその怖い顔やめろよ」

「怖い顔なんてしていませんが?」

「だから、その顔をやめろって言ってるんだよ」


新学期が始まってからずっと機嫌が悪いウィルに遂に苦言を呈したのはゲイル。

理由はわかりきっている。

ライヤに置いていかれたからだ。

ウィル本人もわかっているのだろう。

仕方のないことではあると。

だからこそ周りにあたることなく過ごしていたのだが、溜め込んでいる分むしろ質が悪くなっていた。


「見ろ、シャロンなんてやっとこさ俺たちとなら話せるようになってきてたのに新学期に入ってから二言三言しか話してないぞ」

「……!? ……!!」


ぶんぶんと首を振るシャロンだが、やはり声は出ていない。

そんな様子を見たウィルは、はぁと大きく息を吐く。


「……確かに、不機嫌になっていても解決することではないですしね。でも、どうしたんですか? あなたがそんなことを言ってくるなんて」

「担任に言われたんだよ。怖すぎて授業どころじゃないからどうにかしてくれってな」

「そんなにでしたか……」


ライヤがいなくなったという事はつまり他の教師が担任となることを意味する。

もちろん3年生になった彼女にも新たに担任があてがわれた。

ウィルとしては、担任に特別悪い感情はもっていなかった。

ライヤの1年後輩にあたる教師で、1年間上級生の副担任のような立ち位置ののちにウィルたちの担任となった。

貴族にしては珍しく基本的なスタンスの腰が低く、好印象だったのは覚えている。

ウィルという王族がいるからかもしれないが。


「あとで謝りに行っときましょうか」

「それがいいかもな」





「ただいま帰りました……」


今は誰もいない館のドアを開ける。

毎日というわけではないが、ウィルはライヤ達との家を度々訪れていた。


「では、今日は2階を掃除しましょうか」

「(コクリ)」


エウレアも律儀についてきていた。

最初は先に帰っていいと言ったのだが、この家にライヤやフィオナがいないのにウィルを放置するわけにはいかないと言われれば頷くしかなかった。

普段はフィオナやライヤ、時にはアンまでもいるこの館は下手に護衛をつけるよりも強固な守りを誇っていた。

それが今はウィルが立ち寄らなければ誰も来ない場所になっている。

時々訪れては掃除をして帰っているのだ。

ウィルが命じれば館をきれいに保つなど簡単だろうが、自力で掃除をしている。


「次に会えるのはいつになるでしょうか……」


王城で聞いた話によると、分校づくりは難航しているらしい。

土地の選定すら終わっていない状態で、見通しなど無いに等しいと。

そんな状態ではライヤも帰ってこれないだろう。

自分から会いに行こうにも、行けるとしたら夏休みに入るまで待つほかない。

離れてからまだ2週間と経っていないのにこんなにも恋しい。

こんな気持ちは初めてで、納まりがつかない。

誰かに相談するにも、恥ずかしい。

既にバレバレなのは見えていないふりをしておく。


「はぁ……」


ため息は止まらない。





[あとがき]

ドラクエやりたい。


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