教員不足

「さて、そんなことを言っても校舎が出来ないことには生徒を受け入れられないよな」

「先生! 手が凍り始めました!」

「なんでだよ!?」


そんなわけない魔法の発動も多々ある。

今はまだ綱を炎で燃やす加減を学ぶ段階なはずだ。

氷魔法なんて間違っても使うはずがない。


男子生徒の手に飛びつき、制御を奪って即座に解凍し、手の様子を見る。


「大丈夫そうではあるけど……。ヨル! こっちも頼めるか!?」

「はいはい、今行きますよー」


生徒たちの間を走り回っているのはライヤだけではない。

小さなボードを抱えたヨルもまた、生徒の事故(?)の後始末に追われていた。


「……このくらいなら大丈夫です。今は動かしにくいでしょうが、少しすれば元の感覚に戻ります」

「それは良かった」


「「先生!」」


別々の場所で声が上がり、2人は顔を見合わせ、分かれる。

唯一の救いはヨルも魔力制御が上手く、攻撃をするわけではないため魔法の解除くらいは簡単にできることだ。

全部の事故をライヤが解除した後にヨルが診ることになっていればただのミスが大事故につながりかねない。

それほどにレベルが低かった。





「早急な人員の確保が必要だ」

「そんなのもうやってるわよ」

「その程度じゃ足りない」


いつになく真面目なライヤの押しにアンが一歩後ずさる。


「どうしたのよ。授業のシステム自体は学園のものと酷似していていいって話だったじゃない」

「よく考えたらあれ、1年生の時から8年生まで段階的に成長を促していけるから成立するものであって、急にはどう考えても無理なんだよ。勉強に例えれば、足し算できないのに二次関数やらされてる感じか?」

「かなり無茶ね……」

「そりゃ今から入学してくる代はいいだろうけど、あと2,3年。短いやつはあと1年もなく社会に出るだろ? そんな短期間で王国の卒業者のレベルまで引き上げるのはどう考えても無理だ。その後に自分でも成長していける段階まで確実にもっていく努力が必要だと思う」

「……でもそれだと、教師の負担が凄くないかしら」

「だから教師を増やしてくれと言ってるんだ。間違っても俺の時みたいに新任がS級(クラス)の担任としていきなり1人で放り込まれるようなことがないように」

「各クラスに2人以上必要だったりするかしら」

「低学年は1人でいいかもな。王国でそれが可能なことはわかってるし。ただ、上級生は卒業までの時間が少なすぎるから、1人じゃ限界があると思う。スタート時の学年が上であればあるほど教師の数は多い方が良いと思う」

「……一応、募集はしてみるけど。学園の教師の採用ラインに到達しない教師は絶対に採用しないわよ?」

「……教師のレベルの維持のためには仕方ないけど。あまりにも人がいなかったら今いる人間が命を削るっていうのだけ念頭に置いといてくれ」

「いやな脅し文句ね……」


割と本気です……。





[あとがき]

更新ってこんなに難しかったのか……。


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