家名の違い

「ここがズンバか……」


馬車移動で凝り固まった体を伸ばしながらライヤは大分に周りを見渡す。

学園の分校が作られるだけあって、海洋諸国連合の中では一二を争う規模の国だったはずだが。


「思っていたよりは閑散としてるな」

「元々、力のない国々が大国に対抗するために集まっていたのですから、仕方ないでしょう。その上、諸国連合内では特定の国の国力が増大しないように足を引っ張り合う始末。瓦解するのも時間の問題だったということでしょう」


生まれ育った国に対しても辛辣なミク。

確かに色んな国が合体してできた集合体が長持ちしたという記録はあまり見たことがない気がする。

トップが分かれているというのが体制的に無理があるのだろう。


「先生たちには一先ず私達の家に泊まっていただきます。急な決定のようで、宿の用意ができませんでした」

「俺は問題ないけど、迷惑じゃないのか?」

「むしろ泊まってくれないほうが困ります。先生ももう貴族ですし、アン王女もいらっしゃいます。ここで放り出しては王国に楯突くのかと受け取られかねません」


かなり真面目な顔で説明するミク。

そこらへんの宿でも、と簡単に考えていたライヤだったが、言われてみれば王女にそんな対応をするわけにもいかないか。


「じゃあ、お願いするよ」

「はい、こちらへどうぞ」


元々ミクの家に案内されていたらしく、すぐ近くにあった大きめの屋敷に案内される。

ミクが住んでいるということは領主の家のはずだが、大きさ自体はあまりライヤたちの家と変わりはない。

装飾が施されているかどうかの違いといったところか。

ライヤたちの家は元々本拠として作られていないので装飾に関しては簡素な作りなのだ。

そこはやはり一国の主か。


「ようこそいらっしゃいました」

「授業参観ぶりですね」

「あの時には大変なご迷惑を……」

「いえいえ、全然軽い方なので大丈夫ですよ。ロンダークさん」


家名でミクとキリトの親代わりであり、ズンバの領主である男の名を呼び、ライヤはふと気づく。


「そういえばだけど、なんでミクとキリトって家名が違うんだ? ここで一緒に育ったなら家名は一緒になるはずだろ? ……もしかして複雑なやつだったりする?」

「いえ、全く。簡単に言えば、自分を保証してくれる方の家名を貰った形ですね。キリトは義父の家名を貰いましたが、私は義母の家名をいただきました」

「なるほど。わかるようなわからないような……」

「特に違いはないので気にしないでいいと思います。待遇にも違いはありませんし」

「そんなもんか」


「今回はこちらに学校を作っていただけるとのことで……」

「そんなにかしこまらないでください。俺自身はえらい立場の人間じゃないので。その辺りはアンにお願いします」


アンを前に押し出し、その場を離れるライヤ。


「……簡単に放してくれましたね?」

「あれはアンの仕事だ。責任の処遇に関して間違えるようなアンじゃない」


アンが何も言わなかったことに言及するヨルだが、むしろアン以外があの話をする方がおかしい。

ライヤはあくまで一教師として派遣されているのだから。





[あとがき]

お久しぶりです。

引っ越しが一段落しました。


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