白状
「で、どうだったの生徒たちは」
「まぁ、進級には問題ないよ。例年と比べても高水準だと思うし」
「そうね。それは認めざるを得ないわ」
アンやライヤ、フィオナはその学年でも飛びぬけた存在だったが、ウィルたちは平均値が高い。
珍しい例だと言える。
「じゃあ、テストも終わったことだし、ヨルの番かしら」
「ぅえ!?」
いきなり話を振られると思っていなかったヨルは狼狽する。
もちろん(?)、いつにしようかと考えてはいたが、テスト終わってその夜とは考えていなかった。
「ふーん?」
ウィルも不穏な声を出しているし。
「い、いえ、今日はライヤさんも疲れてるでしょうし……!」
「疲れている時に癒してあげるのが妻の務めでしょう?」
「くぅーん……」
子犬のような鳴き声が出るヨル。
アンは早く2回目以降に移りたいがためにごり押してくる。
「今日はやめとこう。1週間の疲れをとらないと」
「……まぁ、いいわ。でも私たちが待ってるってこと忘れないでね」
アンってこんなにイケイケだったか?
「昨日は悪かったな」
「いえ、そんなに大したことではないですよ。私も疲れてましたし……」
翌日、2人で町に出ていた。
なんだかんだ、ライヤとヨルの2人だけで行動するのは久しぶりである。
「どこか行きたいところはあるか?」
「いえ、特には……。ライヤさんは?」
「俺もないなー。じゃあ、適当にぶらぶらするか」
2人で屋台で買い食いなどしながら歩く。
「先生として1年過ごしてどうだった?」
「そうですね……。思ってたよりも忙しくなかったというのが本音ですかねぇ」
「それはたぶん保健の先生だからだと思うけどな」
「ふふ、そうですね。私はライヤさんの仕事を見ていて忙しいと思っていたので……」
思えば、一緒に住んでる期間はフィオナの次にヨルが長い。
フィオナは一応管理人室で遠かったが、ヨルが住んでいたのは隣の部屋だ。
ライヤが家で仕事をしていたのにも気づいていたのだろう。
「保健の先生なんて忙しくない方がいいに決まってるけどな」
「それもそうですね」
ふふふと笑い合う2人。
イチャイチャとしているのには変わりないが、他の皆とは違い、ほんわかとしている。
言うなれば、熟年夫婦かのような安定感がある。
少し街から外れたところにある公園のベンチに座り、話す。
「ちゃんと話しとこうとは思ってたんだけど……。今年の初めの事件。助けなくて悪かった」
「はい」
穏やかな笑顔で返してくるヨル。
「ちゃんとわかった上での返事か? 助けなかったんだぞ?」
「あの時期のライヤさんが私と距離をとろうとしてたのはわかってましたから。むしろ、来てくれたのが嬉しかったくらいですよ」
ヨルなんてライヤにとってはどこぞから湧いてきて事件を持ってきた女。
ちゃんと王国での立場づくりにも協力してくれた。
その時点でヨルを頼むというヨルの父の願いは叶えていたと言える。
ヨル自身もずっと甘えてはいられないと感じていたのでその認識は正しい。
「俺には全部を守る力なんてないから……。いや、これも言い訳になるけど……」
「わかってますよ。切り捨てようとしたんですよね?」
顔を顰めるライヤ。
言い返せないのは、実際にそうだったから。
「私の最大の目標は、諸国連合の人たちを守ることでしたから。それが達成されたあと、私はどうなってもいいと思ってたんです。だから生徒の盾になりましたし、それを後悔してないです」
「それでも……」
「ライヤさん、私のことは好きですか?」
すっとベンチから立ってライヤを見下ろすヨル。
身長の問題で見下ろすと言っても大した高さではないが。
「もちろんだ。いつも支えられている。俺が返せているかもわからないくらいに」
「私を好きでいてくれているなら、何の問題もないです。義務感で、とかだったら私も悲しかったですけど」
「それだけはない」
「なら、いいじゃないですか。も、もちろん、私もライヤさんの事、好きですし……」
ぽぽぽ、と顔を赤くするヨルに苦笑する。
これをヨルの強さと言っていいのかはわからない。
だから、あまり気にしないようにはするが、絶対に忘れないようにしようとライヤは誓うのだった。
「それで、ですね……。その、私もライヤさんのものだという実感が欲しいと言いますか、なんと言いますか……」
「ははっ! やっぱ強いな!」
「な、何がですか!」
そりゃあもう期待に応えるしかないよな?
[あとがき]
転居前のいろんなお店食べ修めしてたら凄いお金が無くなる。
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