持ち味
「……ご、ごめんね、役に立たなくて……」
「何言ってるの! すっごい役に立ってるよ!」
シャロンの班は女生徒のみで構成されていた。
ただでさえ恥ずかしがりやなシャロンへのウィルの配慮である。
その甲斐もあってか、シャロンも自分の役割を全うできていた。
「あんなに周りを飛ばれたら気にならない魔物なんていないよ! この調子で頑張ろう!」
「(コクコク)」
円滑なコミュニケーションとは言えないが、普段よりも口数は多いだろう。
「2年生であれほどの飛行魔法を……!」
一方、その様子が映し出される会場ではざわめきが止まらない。
飛行魔法に挑戦する者は多いが、実用的なレベルにまで到達する者は少ない。
魔力量の問題であったり、魔力制御の問題であったり、そもそも風魔法が苦手であったりなど諦める理由は様々だが、一般的に難しいものだという認識に間違いはない。
そんな飛行魔法を魔物相手の囮役として、まさしく実用的に10歳の少女が使いこなしているのだ。
「可憐だ……」
そして見目麗しい少女が空をひらりひらりと舞う様は人の目を惹きつける。
映像でなく、会場でこの量の視線を向けられていたらシャロンはまず間違いなく気絶していただろう。
体育祭がこの形式となって良かった数少ない事項のうち一つかもしれない。
体育祭終了後、シャロンに縁談の話が多く舞い込み、目を回すのはまた別の話である。
『いけいけ~!』
画面は切り替わり、C
元気いっぱいという様子の彼らは端からスタートこそしたが、手当たり次第に見える目標に飛び掛かっている。
「次だぁー!」
「「おぉー!」」
班に分かれてはいるが、あまり少人数にならず、S・F
人数による一斉制圧で魔物に反撃の暇を与えることなく個別撃破している。
「荒いけど、それでもいけてるしいいのか……」
上空から討伐数を記録しているライヤの独り言。
ライヤも小技を駆使して戦うタイプであり、目の前で繰り広げられている人海戦術のようなものは個人的にはあまり好きではない。
ライヤの嗜好は今は関係ないのだが。
「先生! プラス1ね!」
「数えてるから。よそ見するな」
「よし、次いくぞー!」
うわあぁぁ! と大声をあげながら突進していくC
「あのテンションで最後まで突っ走るつもりなのか……?」
「あれがライヤ・カサンか……」
一方、会場ではシャロンが映っていた時とはまた違ったざわめきが広がっていた。
C
そこに映っていたのは事も無げに宙に浮きながら手元の紙に討伐数を書き込んでいるライヤの姿。
見ただけでシャロンなんて比較にならないほど飛行魔法を使いこなしているのがわかる。
また、貴族たちにとっては今までに数えきれないほど話題に上がって、最近にはついに叙爵された相手。
昨年の体育祭では姿が見えず、ゲイルとの決闘の時にしか見ていないので改めてその姿を確認する機会となった。
[あとがき]
蜻蛉で「かげろう」と「とんぼ」と読めるのに納得がいかない。
ここまで読んで頂きありがとうございます!
良ければブックマーク、応援、評価、感想お願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます