反省の色

話し合いと情報共有はつつがなく行われた。

Fクラスの経験者たちの感覚的な話も多く、最初は苦労していたが付き合いの長い他のFクラスの生徒がかみ砕いて説明し直すことによってSクラスの生徒たちも理解できていた。

だが、どこまでいっても言葉だけなのは確かだ。

百の言葉は一の経験に及ばない。


「最初からいつもの動きをしようとしない方が良いと思います」

「どういうことです?」


興味深いことを言っていたのはティムがいる班で指導役をしていた生徒。


「最初からいつもの動きなんて無理です。こう言うと、意識すればできるだろう、と思うかもしれませんが意識している時点でいつもの動きではない、と思います」

「なるほど……」


護衛として生きているティムには何か琴線に触れるものがあったのだろう。

深く頷いている。


「魔物でなくとも、生きている相手を殺すために戦うというのは初めての人も俺たちの中にも多いです。それで普通に動けるほうがおかしいです。最初は相手をよく見て、回避だけを考えていいと思います」

「道理ですね。なるほど……」


それぞれの班で伝え方に違いはあるものの、総じて最初は様子見に徹したほうが良いという意見で統一されていた。

あまりにも同じ意見が出ていることにライヤは違和感を覚えるが、クンの様子を見て納得する。

恐らくだが、クンがクラス内でどのように伝えるかを共有していたのだろう。

あまりにも手際が良い。


「なぁ、マオ」

「……なんでしょう」


後ろから没収したはずだがまた新しい包丁を持ってそろりそろりと近づいてきていたマオに問いかける。


「クンはずっとあんな感じか?」

「あんな感じとは?」

「わかってるだろ」


見つかったことに不満げなマオは簡単に答えようとしないがライヤが何のことを言っているのかくらい察しがついている。


「……去年の体育祭のあとくらいからずっとですよ。何があったのかは聞いていませんが、何か大きいことがあったのでしょう。クンを変える出来事が。クラスとしてはまとまりが良くなったのでいいことかもしれませんが、張り合いがなくなったのは確かですね」


ずっと去年のことを反省しているのだろう。

反省しすぎだとは思わない。

子供とはいえ、王国全体を巻き込んだ騒動まであと一歩だったのだ。

だが同時に、そこまで自分を律するのかとも思う。

決して口には出さないが。

覚悟を持って日々を送っているクンへの侮辱になるからだ。


「てかお前もちゃんと班で話聞けよ」

「私はいいんです。クンと一緒に皆をまとめる時に聞いていますから」


どうやら、予想通りだったようだ。


「というわけで、死んでください」

「やなこった。出直してくるんだな」


なんでもない感じで突き出してくる包丁を土と水の複合魔法の粘土で絡めとる。


「ふふふふ……」

「はははは……」


互いに笑いながら隅の方で命を狙っている側と狙われている側。

傍から見れば狂気である。

他の生徒たちがドン引きしているのに2人は気付かなかった。





[あとがき]

眠い。


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