トラウマ

毎年恒例のプール授業。

夏休みに数日だけ登校してきて水泳の授業を行うものだが。


「あれはどうしたんだ……?」


去年のプール授業では元気だったはずの1人がやけに元気がない。

1回目なのでプールで自由に遊んでいいことにしているのだが、プールサイドの角で頭を抱えている。


「ふふふ、お教えしましょう!」

「いや、教えては欲しいけど。その水着の色はなんだ……」

「私の得意魔法にインスピレーションを受けまして」


ウィルが着ているのは薄い水色のスクール水着。

わざわざ特注で用意してきたらしい。


「まぁ、確かに色に関して決まりはないけどな……。で、なんでゲイルはああなってるんだ?」

「えっと、この頃大きなお祭りがあったでしょう?」

「あぁ、ミリアリアが来た副産物だな」

「そこで先生方はデラロサ君とマロン君には会ったと聞いております」

「そうだな。そういえば、ゲイルは用事があるとかなんとか……」

「それです」


ビシッとウィルがライヤに向け指さす。


「お祭りと言えば?」

「……?」

「デートですね?」


そうなんだ……。


「そこでゲイル君はシャロンさんを祭りへと誘ったらしいのです」

「おぉ?」


何という展開だ。

だが、声をもう少し小さくはできないだろうか。

隅っこのゲイルが羞恥に悶えている。


「まぁ、それ自体はなんらおかしなことではありません。貴族の結婚する年齢は特に若いですから。婚約くらい既に済ませている方々もいらっしゃいますし」


つまり、アプローチが妥当だと。


「しかし、シャロンさんは断ってしまったと!」


一際声が大きくなるウィル。

その後ろで恥ずかしそうにビート版を抱えてもじもじしているシャロン。

成長著しい胸部が潰されている。

そしてプールサイドではパタリとゲイルが倒れた。

限界を超えたようだ。


「それで、顔を合わせづらいというわけですね。ご清聴ありがとうございました」

「もしかしてウィルってさ、恋バナとか好き?」

「はい!」


いい笑顔で返事するウィル。

シャロンが自分で相談したのだろうが、相手を間違ったとしか言いようがない。


「ゲイル君のことは気にしなくてもいいと思います」


プールからあがり、いつもの眼鏡をかけたデラロサがこちらへと寄ってくる。


「お祭りなんてもう10日も前のことでしょう? それからずっとあんな様子ですから」


10日も引きずってるのか……。


「シャロンも別に嫌いだから断ったってわけじゃないんだろ?」

「……あの、……はい……。……恥ずかしくて……」

「シャロンならそうだよな。まぁ確かに俺がどうこう言う事じゃないか……」


クラス内の恋愛かー。

他の先生はこういうのが発覚したときはどういう風に対応してるんだろうな。


「先生、一緒に遊びませんか?」

「え?」

他の方々ライバルがいない生徒である特権を活かさなくてはいけないのです」


ライヤもまた他人ごとではないのであった。





[あとがき]

Valorantの世界大会準決勝、熱すぎました。


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