学校の先生に凄い人はいない

「じゃあひとまず、ヨル先生は無事だったんですね」

「あ、これまだ発表されてないからな。頼むぞ」


本来であれば今回の事件はとりあえず解決したと報道があっても良いが、ネックは貴族の子女に被害があったこと。

いかに中小貴族とはいえ無視できないし、その派閥の上役からもかなり圧力がかかっているらしく、どうなるかはわからない。

貴族の派閥の機微などそれこそライヤの専門外なので考えることもない。


「こんなことがあったから復帰するかはまた別の話だとは思うけどな」

「復帰すると思います」

「……そうか?」

「はい」


何か確信を持った紅い瞳でウィルは言う。


「何か根拠が?」

「女の勘です」


史上最も男が信じられないものきたー。





「今のところ変な噂は立ってないみたいだ。俺の知ってる範囲でだけど」


その夜。

いつものようにフィオナ宅でご飯を食べながら情報交換をする。


「それは良かったです」

「イベリコの野郎だけどー。普段は年齢が成人に達してないから気を遣ってたけど、ヨルちゃんが成人だから歯止めが利かなかったとかよくわからないこと言ってたから壊しといたよー」


ゆるふわモードなのになんかエグイこと言ってる人いる。


「あいつの独断であんな大掛かりな誘拐事件が起きたってことですか?」

「うち調べだとそうだねー。っていうか、あれに協力したがる奴なんてそうそういないでしょー」

「確かに」

「あ、あと、私たちが怪しがってた顧問の先生のことだけどー」

「お、何かわかりました?」

「軽い魅了魔法みたいなのを持っているらしいね。ただ、本人はそれを認めてなくて自分の魅力だと言い張ってるらしいよー」


なんだそのイタい奴は。


「それで、女の子は戦わない方が綺麗だって考えから、あれで守ってる気になってるらしいねー。あそこで学べないことの方が罪深いけどー」

「えっと、つまり。自分の美学に基づいて戦闘の練習をさせないようにしている勘違い野郎っていう認識であってます?」

「そうだねー。本人に悪気がないのがまた厄介だよねー」


偶にいるよな、そういう馬鹿。

学園を卒業してどういう道を歩むのであれ、自衛の手段を持たない方が危険だと思うんだが。

自分が守ってあげてるという自己陶酔でその辺りは考えてないのだろう。


「前は諸国連合の方にいたらしいんだけどー。ヨルちゃん何か知ってるー?」

「いえ、私は辺境の方ですし……」

「ま、それもそうかー。そっちの方でも何かやらかしたらしくてー。職を失ってこっちに来てるんだよねー。能力はあるから学園長は採用したらしいんだけどー」


確かに的あては上手くなっていた。

魔力の少ない生徒にも上手く教えていたし。

実戦で動かない的あてがどれだけ役に立つかという話だが。


「じゃあただのお騒がせやろうという認識で」

「天下のアジャイブ魔術学校にも変な人は多いんですねぇ」

「ガチの犯罪者がいたくらいだしな。ってか当事者だろ」

「いやー、諸国連合にいた時でも知ってるくらいに大きな学校でしたので。よほど凄いのかなと思ってたんですけど」


「本当にすごいやつは学校になんかいないだろうからな。一部例外はあるだろうが」


アンみたいな。





[あとがき]

タイトルは持論です。

立派な人はたくさんいると思います。


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