発見
「これ、俺の魔力との根競べじゃないか……?」
「そんなのわかりきってたでしょ?」
「いや、これ最終盤に見つけたら俺使い物にならないと思うんだけど……」
「その時は仕方ないから私が全て薙ぎ払ってあげるわ」
それが問題なのである。
王都内でライヤというストッパーなくしてアンが暴れればどこまで被害が拡大するかわかったものではない。
各家の庭が広すぎて家と家の距離がいかに遠いとはいえ、そこはアン。
どこまで巻き込まれるやら。
フィオナが見せてくれた各家の地下の様子などを思い出しながら順にめぐっていく。
「王家としてはどうなんだ? 各貴族家もわざわざ自宅の地下のことまで伝えたりはしないだろ? なにか地下で良からぬことを企んでいたりとかは想定していないのか?」
「想定していないと言えば嘘になるわね。ただ、今回のような国家の未来を左右しない事項については捨て置いているのが現状よ。捨て置いているというより、把握できていないっていうのが実際のところだけれど」
「そんなもんか」
ずっと緊張していてももたない。
軽く話しながら移動していく。
魔力の感知にライヤは魔力を全て費やしているので飛行しての移動などできない。
徒歩での移動となる。
「明らかにおかしい反応があるのはいいのか?」
「今回の事件に関係ないならとりあえず捨てていいわ」
「了解」
記憶にある地図と明らかに違った地下空間が広がっている場所などもあったが、とりあえずは無視して進んでいく。
「……?」
「どうしたの?」
ライヤが地面に視線を落とし、立ち止まる。
「ここおかしいぞ? 魔力が小さすぎる……」
貴族家の地下にいるのはほとんどは貴族だ。
公に出来ない何かを地下で行っているのだろう。
彼らは総じて魔力を多く持っている。
だからこそ、ライヤの魔力感知でも読み取りやすいのだが、その足元に感じる魔力はかなり微弱。
それこそ平民の、発展途上のような。
「アン!」
「すぐに軍を呼ぶわ!」
「それには及びません」
振り返れば、フィオナと見たことのない顔が十数人。
「こんなこともあろうかと、部下と共に令状を取ってまいりました」
「流石ね。行くわよ」
暗部も、一応は軍属。
その権限を使って来たのか。
「あまりにもタイミングが良すぎないか?」
「私も驚いています」
とにかく、助かったのは確かだ。
時刻は午後3時ごろ。
どんな立場の貴族であれこの時間に家にいることは少ない。
「アン・シャラルよ。少し入らせてもらうわ」
名前だけで使用人たちを退かせるアン。
こういう時に名前って便利だな。
邸宅から地下に20メートル程下がったところ。
かなり綺麗に整備された空間がそこにはあった。
「ここだな」
木の扉の奥に小さな魔力が数個とそれよりは大きな魔力が一つ。
「鍵はあるけど、アン」
「任せて。中にいる人! 下がっていないとどうなっても知らないわよ!」
アンは大声で扉奥に注意を呼びかけ錠前に手をかける。
ジュウ……!
音を立てて錠前が溶け落ちる。
「……間違いないわね」
扉の奥にいたのは攫われたと思しき少女たち。
怯えて部屋の奥で縮こまっている。
「俺はライヤ・カサン。学園の教師だ」
自らの白ローブを示すように前に出る。
教師だと分かれば安心してもらえるだろうと思っての行動だったが、効果はない。
「ひっ……」
むしろ、逆効果まであった。
そんなに俺って怖いか……。
目つきが悪いのは認めるけど……。
「……ここにはアン王女と共に来た。安心して欲しい。すぐに地上に連れて行く。そして、教えて欲しいんだけどここにもう1人来なかったか?」
ぷるぷると震えて口を開かない少女たち。
無理もないか。
「お願い、私の友人も捕まってるの」
「……わかりませんけど、奥の方かもしれないです………」
アンが話しかけると、割とすんなりと一番大きな子が口を開いた。
恐らく彼女が貴族の子女だろう。
「奥だな、わかった。先輩」
「えぇ、私たちはひとまず彼女たちを学園まで送ります」
「いや、軍の方で一旦保護して欲しい」
「? わかりました」
フィオナとその部下たちにその場を任せ、アンと共に奥に進む。
奥と言っても、精々数十メートル。
すぐに目標には辿り着いた。
「嘘……!?」
アンが言葉を失う。
声が出なかったのはライヤも同じだ。
そこで2人が見たのは一糸まとわぬ状態で手枷により吊り下げられていたヨルの姿だった。
[あとがき]
キムチチャーハン最強!
ここまで読んで頂きありがとうございます!
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