体育祭当日 14:52
「クンに話して良かったのか?」
「あれだけ脅しておけばいう事はないでしょう?」
「まぁ、そうだろうけどな……」
あれで言うならもうそれはクンを褒めるしかない。
「……教師って難儀ね」
アンもクンに対する処罰が軽かったと思っているのだろう。
少し後悔しているかのような口ぶりである。
「まぁ、子供に対してと考えたらいいんじゃないのか?」
「でも、本来なら一族郎党処刑じゃない?」
「そ、そうだな」
王家の、裁定者としてのアンをあまり見てこなかったライヤはその圧に少したじろぐ。
「残念だが、親たちは免れられないだろうな。だが、教師というのは抜きにしても子供には少し甘くてもいいんじゃないかと思うぞ」
「そうかしら……」
「……責任のない子供には無理に背負わせる必要はないだろ。そういうところで意味もなく裁定を下すようにはなってほしくないな」
「そうね、そうよね」
少し疲れたのか、アンはライヤに歩み寄って肩にもたれかかる。
変装を解いて元の美しい白色に戻った髪をライヤが漉く。
「少し落ち着いたら戻るんだぞ。俺もまた会場周りの警備に戻らないといけないから」
「そうね。でも、もう少しだけ……」
ワアァァァ……!
より大きくなった歓声が会場から聞こえる。
次の試合が始まったのだろう。
ライヤもアンも今までの試合結果を知らないため、どこの
2人の空間を作りながらも、ライヤはS
「ここでS
同時刻、会場へと出てきたS・F
特にもはや後がないA・E
わけもなく。
「それで、どうするの?」
「ふん! A
「はぁ……。向こうにはS
「人数をかければ問題ない!」
実力では劣っていると自ら言っているようなものだが、戦略としては正しい。
彼がその言葉の悲しさを自覚していないだけで。
「私たちは何をすればいいの?」
「E
「そうだといいわね」
呆れたと言わんばかりに後方へと下がっていくE
「ろくな魔法も使えないくせに……!」
しかし、彼女は聡明であった。
確かに魔法戦はこの陣取りの大局を左右するものであり、重要視するのも頷ける。
だが、A
加えて、前の陣取りで見せたS・F
明らかにF
他の動きが上手くいって実行に移されなかっただけなのだが、試合をちゃんと見ていればわかることだった。
S
E
「ごめんなさいね、皆」
「委員長のせいじゃないよ。俺たちだって気分が悪いさ」
「体育祭は来年もある。また頑張ればいいよ」
「そうね……」
委員長というものは存在しないが、役目からそう呼ばれていた。
そして彼らは思うのだ。
どうか相手がA
「くそっ、ちょこまかと……!」
「リーダー! 人数が多すぎる! どう対処すればいいんだ!?」
「このままじゃ突破されるわ!」
S・F
そもそもがA・E
ライヤやアン、他の魔法を上手く使える者たちのように1人で複数の魔法を用いることが出来なければ対処できないだろう。
それに、彼らはまだ1年生だ。
的に当てる練習はしていても、実戦的に動いているものに当てる練習などしていない。
動きを先読みして撃っても相手に届くころには微調整が出来るような距離ではなく、外れてしまう。
運よくちょうど当たる軌道だったとしても避けられてしまう。
「うろたえるな! 何か絡繰りがあるはずだ……!」
リーダーはギリッと奥歯を噛みしめながら相手の様子を伺う。
彼らの動きには必ずS
だからその規則性を見つけようとしているのだ。
「進めぇー!」
だが、そんなものは存在しない。
ウィルが下した指示は1つ。
「好きにやってこい」
E
加えて作戦という作戦がないため、生徒たちの動きに規則性がない。
いくら目を凝らそうと、どうすることもできなかった。
「くそっ、おいE
前に目を向けたまま、後ろにいるはずのE急に声をかけるが、反応はない。
振り返ると、自陣の奥で何もしていない者たちが目に入った。
「お前ら! 負けてもいいのか!」
「あんたの指示には従えないわ。負けるのも当然の采配をしてるのはあなたでしょ」
「庶民共が……!」
この言葉によって体育祭後の彼へ処分が下されることが決定した。
「こうなれば俺たちも取るしかない! 進軍だっ!」
これだけの人数を攻めにかけているのだから、守りが薄くなるのは当然。
「これは……!」
相手がS
ライヤによる授業によって魔力制御が少しは上達している生徒たち。
手加減はまだ出来ないが、火力を上げることは可能となっていた。
彼らが攻め入ろうとする前には高出力の火の壁、水の壁、氷の壁が立ちふさがっていた。
魔力量の桁が違う。
A
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