体育祭当日 13:25
「誰だお前は……?」
「教師よ。そんなこともわからないの?」
アン、いやアンネ先生は怒っていた。
自らの愚行に子供を巻き込んでいる親連中に対して。
「尚更話すことなどない! がっ!?」
先ほど自分が言った言葉を忘れるくらいには。
腕の一振りで男たちが握っていた剣は熱され、持てないほどの熱さになった剣を男たちは放さざるを得ない。
「あら、その程度の覚悟でここに来たの?」
「お前らのような恵まれた者にはわからない!」
「ならわかるように説明しなさい。ふっ」
「な!?」
相手が女性、そして腰にある剣を抜いていない。
また、今の魔法の発動速度からアンネ先生をよくいる魔法特化の人間だと判断した男たちは一斉に組み伏せにかかるが、体さばき1つで投げられ床を転がる。
しかし連携の取れ方、その判断の速さを見ても外の連中とは一線を画す実力の持ち主たちである。
「そこの生徒!」
ビクッとする男子生徒。
「なんでこんなことをするの?」
「なんでって……」
「答えるな!」
「答えなさい。話次第では私が協力することもあるかもね」
男子生徒の親は止めるが、今しがた彼らが目の前の教師に赤子の手をひねるようにあしらわれているのを見ている彼は揺れる。
勝ち目はない。
そう思ってしまっている。
「どけぇ!」
「どかしてみなさい」
男たちにとって絶望の時間が始まった。
「よし、B・D
団体競技の陣取りの初戦を勝利で飾ったS・F
この舞台に向けて準備を重ねてきたとはいえ、相手のいる練習などはなく本番一発勝負なので緊張は免れなかった。
それも一年生からすれば体育祭さえも初めてである。
固くなりつつも勝利した彼らはよくやったといえるだろう。
「流石お姉さまです!」
「マオさん。私の手柄ではありませんよ。もちろん、皆さんの力だけでもありません。私たち全員の力によるものです」
そう言って少し汗ばんだウィルは顔の前の方にあった髪をかき上げる。
太陽に照らされその白髪はキラキラと光る。
「ぐっ……!」
「!? どうしました!? どこかにけがを……」
「い、いえ、気にしないでください。少し刺激が強すぎただけですので……」
「はぁ……?」
鼻血を出して蹲るマオ。
マオの反応は過剰にもほどがあるとはいえ、程度はどうあれウィルのその仕草に目を奪われない者はいなかった。
そこには確かに王女としての気品があり、人を惹きつける魅力があった。
ライヤも言っていたように、王女として特別ウィルがアンに劣っているところはない。
その圧倒的な武力があるので隠れがちではあるが、普段の王女としてならば公務をサボっていることも多いアンよりはウィルの方が王女していると言えた。
そして、問題の人を率いるという王家の力、つまりカリスマだが。
アンは自らが先頭に立ってその力で引っ張り上げる対応なのに対し、ウィルは同じ列から一緒に前を向いているタイプである。
どちらがいいとは一概に言えないが、少なくとも学生の体育祭という点ではウィルの適性が高いのではないだろうか。
まぁ、端的に言えばさらに士気が上がるのだ。
9歳である彼らには恋愛感情というものはあまり想像のつくものではない。
だが、何か彼らがそれに近い憧れを抱くには十分であった。
「次の試合も頑張りましょうね!」
「「はい!!」」
気合十分である。
「くそっ!」
そんな中、C
「早くどけ!」
待機所にいたF
と言っても一部の生徒だけでA
次は一戦目の勝者と二戦目の敗者、一戦目の敗者と二戦目の勝者が当たることになっている。
「続いての試合はS・F
「どうやら次の相手はあちらのようですね」
「そうですね」
アナウンスが響き、S・F
次の試合相手は前の試合を見ていればわかっていたはずなのだが、勝った余韻に浸っていてそのような情報収集をしていなかったのだ。
「ふん、俺たちの試合など見ずとも良いということか!」
そしてそれがA
「なにを……!」
「良いのです。気にしないで。私たちは私たちのするべきことをするの」
その言葉を聞いていきり立つマオをウィルが止める。
「我々貴族のことを無視するのですか!」
「少なくとも学園においては同じ生徒という立場であり、今この場においては敵同士です。私よりも今あなた方には話す必要のある相手がいるのでは?」
とはいえあからさまに喧嘩を売られたのでウィルもそう温厚には対処できない。
試合を見ていなかったウィルでもわかるほどの亀裂が2級
精一杯の激励であった。
「あなたにそんなことを言われる謂れはない!」
だが彼には煽りにしか聞こえなかった。
「ふふ、そうですか」
そういった側面は十分にあったが。
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