体育祭当日 9:35
暇なアンに見つかっているとは露知らず。
会場の上空を横断したライヤは明らかに怪しい奴らが動いている森に到着する。
「そこでなにしている」
「!? 話がちげぇぞ……? 来ても十数分後という話じゃなかったか?」
「とりあえず、持ってるものを置いてもらおうか」
「あ!? なんで先生ごときに従わなきゃいけないんだよ!」
小声になったかと思えばいきなり大声を出す男たち。
恰好から見るに、それほど身分のある者たちでもないだろう。
だが、その手にある武器はどこで調達したのかわからないものだ。
しっかりとした作りの剣をこのためだけに買うだろうか。
「普段なら従う謂れはないけどな。今は会場周りに限って軍と同様の権限を持ってるんだよ。そもそも、体育祭の会場周りで剣を持ってうろうろしている奴らを放っておけると思うか?」
ニヤリと笑う男。
「そうだな。だが、武器持ちのこの人数を一人で相手に出来ると思うか?」
「ま、やってみればわかるだろ」
気軽な様子でライヤは構える。
「う……」
例の店の地下倉庫でミランダは目を覚ます。
本来なら女性に男性の当て身が当たれば起きるまでに時間がかかるものだ。
しかし、ミランダも軍人であり鍛え方は一般人のそれではない。
ついでに当て身をした側の男も素人であり、1時間にも満たない気絶で済んだ。
「ふむ……」
周りの光景から自分の居場所を察する。
後ろ手に縄で結ばれているが、無詠唱とはいかずとも1人で放っておかれれば水魔法でも風魔法でも切ることは可能だ。
「これではライヤ様にご迷惑をかけているかもしれませんね……」
どれだけ気を失っていたのかはわからないが、一定時間連絡がつかなくなっているのは確定だろうと考えるミランダ。
「しかし、時間がかかったなりに役に立つ情報を持って帰れそうです」
諜報において一番難しいのは対象のいる場所に潜入することである。
今回はその手間を向こうから省いてくれている。
そして、ミランダが気を失っていると思っているので見張りもいない。
もしくは、見張りを立てることも出来ないくらいに人が足りないのか。
どちらにせよミランダが動きやすいことには変わりない。
「何をしようとしているかくらいは調べて戻るとしましょう」
「F級(クラス)の皆さん凄いですね」
「普段から体を動かしているわけではないのです、お姉さま」
一方、生徒たち。
S
S
体の動かし方というものを心得ている。
S
だが、宣戦布告をしてきたA
学園はあくまで魔法のための学校であり、昨今の傾向として魔法が評価の中心となることが多く、S
実はしっかりと体育の授業もあったのだが、教師が押しきられて魔法の授業だけをするようになっていた。
「ちょっと貴族様。ポイントが稼げないのだけど」
「団体種目で取り返せばよいのだ! 貴族の僕に逆らう気か!?」
「学園では身分は関係ないって何回言ったらわかるの……?」
A
今年はE
「それにしても、こんなに生徒がいたのですね」
「……(フルフル)……」
各学年の人数が多いこともあり、各
よってウィルもS
学年全体が集まると壮観である。
そして、観客席には彼らの父兄が来ているのだ。
今まで彼らが見たこともないような人数が集まっている。
人見知りのシャロンが端っこで小さくなって震えているのも無理はない。
「シャロンさん」
「……ぁい……」
「すぐに慣れろとは言いませんが、午後の団体競技までには動けるようになっていてくださいね? みんなでライヤ先生を驚かせるのでしょう?」
「……がんばる。……がんばるけど、うぅ……」
「ゆっくりで構いませんから」
シャロンがこうなるのもウィルは予想していた。
だがS
大事な戦力を眠ったままにはしておけないのだ。
「やはり、無理を言って先生に来てもらった方が良かったでしょうか……?」
先生がいればシャロンも勇気づけられるはずだから。
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