巫女とゴスロリ伝奇譚 彼女は何故凶器を持ってるの?

八薙玉造

プロローグ

 いつの間にか広まっていた都市伝説。

 最初にtwitterで呟く。

 その時、ハッシュタグ#mikogosusirokuroをつけ忘れないように。ちょっと長いので間違えやすい。

 あとは向こうが興味ありそうなことを呟いてると、フォロワーが増える。

 新規登録したばかりで、フォロー1、フォロワー0。アカウント名もランダムなアルファベットが羅列されたもの。あからさまに怪しいけど、フォローを返す。

 するとDMが届く。

 あとはLINEのアドレスを交換して、そっちでやりとり。

 最終的に自分の居場所を教えたりすれば、その二人はやってくる。


 黒いドレス――いわゆるゴシックロリータのドレスを着た女の子と、巫女装束を着た女の子。


「こんにちはー。それでどうすればいい?」

 ゴスロリの女の子が言った。

 本当にやってきた。

 驚いているあたしの前、その子は広い国道の中央分離帯、その柵に腰掛けてる。

 車はぜんぜん走っていなくて、人の気配もない。

 そんな光景の中で、ゴスロリの子が「よいしょっ」と腰を上げる。

「聞くまでもなかったね」

 あたしの後ろに目をやって、にっこり笑う。

 白い髪と、きれいに切りそろえた前髪はお姫様みたいなのに、笑顔はすごく無邪気だった。

「じゃ、お任せコースでいってくる!」

 編み上げブーツが硬い足音を立てる。

 黒いドレスをひるがえして、女の子はあたしの横を駆け抜けていく。

 その手にはいつの間にか、長い柄を持った大きな斧。

「がんばってくださいねー!」

 巫女の女の子は大きく手を振って見送ってた。


 人間が何もできない時。

 人間じゃどうにもならない時。

 あの二人は来てくれる。

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