第84話
「泉はいつも素直に気持ち伝えてくれて……好きとかいっぱい言ってくれるからこっちが恥ずかしくなるから。私のためにいつも嬉しくなるような事言ってくるし……。それに、私だって……私だって……見惚れてたから。前だけど泉が体育祭の時に助けてくれたの不安だったけど嬉しくて……か、かっこいいって思った。今も……かっこいいけど、真剣な顔されると……なんか、ドキドキして目が離せないし……」
「……そうだったんだ」
最後には視線を下げて合わせないようにした結は益々顔を歪めるのにさっきよりも耳も顔も赤い気がする。結が私に見惚れるって、しかもかっこいいって……嬉しいのに理解できない。私って外見はあんまりよくないし、大人っぽい事もできなければリードもしてあげられてないんだけど何か照れてしまう。
「結もかっこいいとか思うんだね」
私は少し照れながら思わず口走っていた。結はかっこいいとか良いなと思う人がいないって前に言っていた。しかも外見は不快にならなければ良いという結の外見からは信じられないような話もしてくれていたから、そうやって思っていたのがありえないような話だ。特に見惚れたって……信じられない。結は私の手を握ると視線を逸らしたままむきになるように言った。
「思うでしょ普通。私の不安とか悩みもいつも解決してくれるし、優しいし……優しくされるとかっこいいって思うものだから。大体付き合ってからは前よりも優しいし、してる時だって激しいけど優しいから……そう思わなかったらおかしいから」
結の気持ちの中にある愛情を感じられてこっちが照れくさい。結ってそんなに私をよく見ていてくれたんだ。好きとは言ってくれるが好きとはまた違った嬉しさがある。
私は目線を全く合わせない結の顔を両手で掴んで目を合わせた。
「ありがと結。結って本当に私が好きなんだね」
「……好きじゃなかったら……付き合ってないし…」
「そうだね。結がそんな風に思ってるの知らなかったよ。他にはどんな事思ってるの?もっと結の気持ち教えて?」
結がここまで素直に言ってくれるなら全部知りたくなってしまう。私はキスをして結をソファーに押し倒すと片手を握りながら間近で結を見つめる。結は恥ずかしそうにしながらも視線を逸らさなかった。
「恥ずかしいから……言いたくない」
「なんで?それ私全然知らなかったんだからちゃんと教えてよ」
「……だから、恥ずかしいからやだ……」
追い詰められているのに拒否してくるなんて分かっていない。私は結に何度かキスをしてから囁いた。
「じゃあ私も教えるから教えて?結に教えてなかった気持ち教えるから」
「……」
髪を優しく撫でて黙ってしまった結の反応を待った。言ってくれそうだけどもう一押しか。私は結に優しくキスをしながら言った。
「結?……教えてよ。……付き合ってるんだから……教えて?」
キスに応えてくれる結は手を離すと私の首に腕を回した。もう目を逸らせない距離に結は小さな声で教えてくれた。
「……いつもかっこよくて可愛いって思ってるけど……してる時はドキドキし過ぎて……おかしくなりそう。泉いつも優しいのに余裕がなさそうで、興奮してくれてるの分かる。そんな泉に好きって言われると、お腹の奥がぎゅってなって、胸が苦しくて……目が離せない。……私、全部好き。……泉の顔も、手も体も……全部……好き」
「……私も一緒。なんか嬉しい。ていうか、そんなにかっこいいとか可愛いって思ってくれてたんだ?」
嬉しくなるような事実に胸が苦しくなる。私はまた軽くキスをしながら結の体を抱き締めて横になった。結は変わらずに私を愛しそうに見つめてくれて片手で私の頬に触れた。
「うん……。思わない時ない。好きって言ってくれる時も、触ってくれる時も…ドキドキしてるからかっこいいなって思ってると思う……。たまに不安になったり自信がなさそうだと可愛く感じるけど、泉はいつも私を引っ張ってくれるから……好き。嬉しくて、ドキドキする」
「ありがと。結もかっこいいよ?」
「え?私が?……私は別に普通でしょ」
「えー?かっこいいよ?」
私は結のおでこにキスをして説明してあげた。
「結だって私の事引っ張ってくれるし安心させてくれるからかっこいいよ?ピアノ弾いてるのもかっこいいし。それに結は一番可愛いよ」
「……そんな可愛くないから」
恥ずかしがって否定してきたけど結は本当に一番可愛いのだ私の中で。ここは譲らない。
「いや、可愛いよ結は。結は見かけも可愛いけど中身が本当に可愛いんだよ。素直な時も可愛いけど素直じゃない時も可愛いし、結の気持ち教えてくれるとこも可愛いよ。それとエッチの時なんか結がいつもと…」
「そんな事まで言わなくていいから!」
私の中で結の可愛い部分を全部説明しようと思ったのに遮られてしまった。
「でも、エッチの時も可愛いよ?」
「いつもしてる時に可愛いとか好きとかいっぱい言ってくれるから知ってる……」
「でも、もっといっぱい言いたいよ」
「もう充分だからいい」
「えー……せっかく説明しようと思ったのに」
怒り気味な結は本当に恥ずかしいみたいだからしょうがなく言うのをやめた。これ以上言ったら結が恥ずかしすぎて黙っちゃうと思うし、それは可哀想だ。黙ってるのも可愛いが。
「……いつも……誉めすぎだから。そんなに誉められるとなんて言ったら良いか分かんないし………」
「だって好きだから誉めたいし……。結は誉められ慣れてるでしょ?パーティーとか行ってるんだから」
私に誉められて照れる結は照れすぎじゃない?と思うくらい前からよく照れている。結は可愛いから昔から可愛いだなんて腐るほど言われていると思うが違うみたいだ。
「……泉に言われるのは違うし」
「あー……それは分かるかも。私も結に言われるとすんごい嬉しくなるし。でも結は照れすぎじゃない?まだ付き合って短いけどいっつも照れてるよね?可愛いけど」
「そんな照れてないし……」
今も照れている結は堂々と強がってきた。バレバレだよと思うが、結がいじらしくて何かはっきり言えない。私は優しく聞いた。
「照れてないの?」
「……うん。ちょっと熱くなるだけ」
「ふーん。熱くなるのに照れてないの?」
「反応に困るから熱くなるの…」
どう解釈しても照れてるとしか言えないんだけど、結は顔をしかめて赤くなっている。結って照れると嘘がど下手なのが本当に可愛いと思う。
「可愛いね結」
結の下手な嘘はもう深く聞かない。結は更に顔をしかめた。
「いきなりうるさい。誉めすぎだって言ってんだろ…」
「え?いきなりじゃなくない?付き合ってるんだから言いたくなるじゃん」
「……知らないし…」
「えー、もういいじゃん言ったってさぁ。可愛いよ結。大好き」
私は照れている結を抱き締めた。素直になったり素直じゃなくなったり忙しい結は気持ちがいっぱいいっぱいで大変みたいだ。しかしこの際言えるだけ言いたい。
「結は本当に可愛いよ。世界一可愛い。可愛くて可愛くて大好きだよ」
結の好きな香りを嗅いで少し強く抱き締める。何か結が可愛すぎてしてしまいたくなるがもうすぐコンクールだから我慢だ。今は一応休憩中だし。ていうか時計を見るといつもより長目に休憩をしてしまっている。私は何も言わない結から体を離そうとしたら結は離れてくれなかった。
「結?そろそろ休憩終わりにしよう?いつもより長目に取ってた。ごめんね」
私は離れない結を抱えるように起き上がると背中を優しく叩く。それでも結は離れなかった。
「結?ピアノしないの?」
「……抱き締めて」
「え?」
聞き間違えかと思うような言葉に驚いてしまう。でも結は強く抱きついてきた。
「早くして」
「う、うん。これでいい?」
私はとりあえず結を抱き締めてあげた。どうしたんだろう。いつもと違う結に戸惑いながら背中を優しく撫でていたら結は私の頬に両手を添えながらキスをしてきた。
「…………」
何も言わないけれど私を見つめる結が求めているのは分かる。もう目がとろんとしているからさっきのでキスがしたくなってしまったのか。私は言えなさそうな結に囁いた。
「キスしていい?」
無言で小さく頷いてくれたのを確認すると結にキスをした。何度も何度も唇を合わせてから深くキスをする。
「はぁ……んっはぁ、……んんっ……はぁ」
「はぁ……はぁ、んっちゅっ……はぁ」
結が積極的に深くキスをしてくるからちょっとにしようとしたのに止められない。今日はどうしちゃったんだろう。好きだからこうやって求めてくれるのは嬉しいが結がこんなに求めてくれるのは中々ない。私は結の良いところを刺激しながら結が離れないように頭に手をやって強く抱き締める。
「あっ!んんっん……はぁ……んっ!はぁ、んっあ!……んっ…」
「はぁ……んっ、はぁ……ゆい……」
悩ましい声にそそられてしまう。もっとしてしまいたくなるが私は我慢をして長くしていたキスをやめた。
「ピアノできなくなっちゃうから……もう終わりね」
「最近……キスしかしてない……」
拗ねたように呟いたそれが意味する事は理解できた。前までは会えばほぼしていたが結のコンクールが迫っているから控えていたのだ。こう言われるとしてしまいたくなるがコンクールの方が大事だ。
「コンクール終わったらしよう?いっぱいしてあげるから」
「……うん。じゃあ、もう少し休憩したい……」
「え?……う、うん。いいよ」
気持ちが高ぶってしまった結は初めて言ったのではないかと思う我が儘を口にした。びっくりしすぎて反応が少し遅れてしまったがこれくらい受け入れる。私は結を抱き締めながら長目の休憩を取った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます