第20話


そして中間テストが始まった。

中間テスト期間は午前中で終わるけど一日に三、四教科のテストを行う。

私は結が教えてくれたおかげで全て解答欄を埋められた。というか、一人でやってた時より劇的に分かっててもはやエンドレス私のターンだった。

昔なんて分かんないとこはあるし考えてたら終わっちゃうしで散々だったけど本当に結には頭が上がらないし結に足を向けて寝られない。



何日か続いた中間テストを乗り切った私は最終日に浮かれながら帰ってからバイトに向かった。

久々の今日のバイトは十時まででダルいけど働かざる者遊びに行けないので頑張る。今日は誰と一緒かなぁ、と思いながら私の最寄り駅の近くにあるバイト先のファミレスに入った。


「おはようございまーす」


裏に入ると料理が出てくる台の前に遠藤さんがいた。遠藤さんは大学生の先輩で仕事ができる綺麗な優しいお姉さんだ。いつもバイト中は髪をお団子にしていて本当に綺麗で優しいけどいつもふざけている。


「あっ、おはよー泉ちゃん。今日暇だからってホール二人だよ?店の扉開かないように電源切らない?」


遠藤さんはにこにこ笑いながらいつもみたいにふざけてきたけど私は笑った。遠藤さんはいつも冗談がぶっ飛んでいる。


「遠藤さんそんな事したら大変なクレーム来ますよ。しかも、まだ四時ですよ?」


「えー。だってダルいじゃん。店長レジ閉めに夜来るらしいから店長来る前だけやろーよ」


「ダメですよ。てか、早くオーダー行ってくださいよ。呼んでますよ四卓」


私はベルを鳴らすと光る電光掲示板を見て言った。絶対ダルいから少し無視してただろうに、遠藤さんは少し嫌そうな顔をするとオーダーを取るためのハンディを出してゆっくり歩き出した。


「分かってます~。そんな怒んなくても良いじゃん。すかしっぺしたあげようか?」


「いや、いいから早く行ってください」


「ちぇー、華のJKはつれないねぇ。ただいまお伺いしまーす」


遠藤さんは決まり文句を大きな声で発しながらホールに出たけどなぜすかしっぺ?話の流れがいつもおかしいけど綺麗だから許せるのが不思議だわ。

私はそれから白と緑を基調にした制服に着替えるとタイムカードを押してホールに出た。今日のシフトは私と遠藤さんと遅れてくる店長がホールらしい。キッチンは社員らしいが、キッチンは基本ホールにそこまで関係ない。


私はダルいけどホールの仕事を始めた。もう客がいなくなった席の皿を片付けてテーブル拭くと予めお箸とかお絞りを裏に用意しておいて、注文とか会計のベルが鳴ったら愛想良く笑って行く。

高校に入ってからやってるから一年以上はやってるけどもう慣れた。最初は緊張してガチガチだったし全然できなくて死んでいたけど今となってはお手のものだ。


しばらくして休憩を挟みながら店が空いて落ち着いてきた頃、裏で遠藤さんとダメだけどジュースを勝手に飲みながら休んでいた。キッチンには社員がいるからまるで水飲んでますよって感じで中が分からないコップで飲んで話していたらいつものやつを言われた。


「で、泉ちゃん友達できた?」


遠藤さんはにやにやしやながらいつもこれを聞いてくるけど私はいつもできませんと笑いながら答えて弄られていた。バイト先の人は私の事情を知っているから笑い話だったけどついに弄られない日が来た。友達のなり方はやばいし脅されてるけど私には友達ができたのだ。


「できましたよ遠藤さん。三人できました一応」


「え!?マジ?泉ちゃん嘘じゃなく?!」


遠藤さんはそりゃもう驚いて疑ってきたけど私はにんまりしながら答えた。


「マジですよ~。バカみたいな金持ちお嬢様ですけど」


「えー、マジかマジか!良かったじゃ~ん。脱ぼっちじゃん!どんな子なの?」


「えーっと、めっちゃ頭良くて金持ちでクソ可愛いけど内心ヤクザみたいなやつですね。他の二人は普通なんですけど」


私は結の事を思い出して特徴を述べたら遠藤さんは愉快そうに笑った。


「ヤバ!何それめっちゃウケる。会いたいわ。さすが泉ちゃんだね。何か凄いヤバくて面白そうな子じゃん」


「確かにヤバいんですけど中身は真面目で面白いやつなんですよ。しかもピアノがめちゃめちゃ上手くて人としての格が違いますね」


「ピアノ?凄いねぇ。ていうか、そんなお嬢様と色々合うの?」


「まぁまぁ合いますけど金持ち過ぎてたまに話について行けなくておやおやしてますよ。ていうか、いつもハエ見るみたいに嫌そうな顔して見られてるんですよ私」


遠藤さんにいつも私がやられている事を話したらそれそれは爆笑された。まぁ、これは本当よく分かる。生きてて経験しないし聞いた事ないよね。


「はっはっは本当ウケる。何それ?ハエとかヤバい、メンタルやられる。その子マジウケるわ。泉ちゃんメンタルは大丈夫?」


「大丈夫ですけど、めっちゃいつも態度悪いのに可愛いからそっちのが萎えますね」


「可愛いのにそれって笑いが止まらん。その子そんな可愛いの?」


遠藤さんは結に興味津々そうだった。まぁ結って中身は真面目過ぎるし優しいけど私への態度ヤバいからな、顔は可愛いけど。もうこの短期間で私は慣れたけど顔の可愛さに関しては羨ましい。


「めっちゃ可愛いですよ。百人いたら一万人位可愛いって言いますね絶対」


「人増えてる。そんな可愛いんだ、益々気になる。私見てみたい!何て言う名前なの?連れてきなよ!デザートは盛ってあげるから」


遠藤さんは楽しそうに言うけどあの金持ちをこんな底辺なファミレスに連れてくるのは難しいだろう。


「え~?こんなチェーン店のファミレス何か来ないと思いますよ?結って名前なんですけど、結の家バカでかい城みたいだし、あいつ移動は信じられない位高そうな車だし」


結の事を考えると誘ったらキレそうだ。私を誰だと思ってんの?とか言われそう。あんな家に住んでてこんな安いファミレス何か来た事ないだろ。遠藤さんは残念そうな顔をしてジュースを飲んだ。


「えー、見たかったのにー。じゃあ、言うだけ言ってみてよ?ていうか、そんな生粋のお嬢様と友達になるなんて泉ちゃん何したの?」


「え?……喧嘩を止めた、かな?」


「喧嘩?お嬢様なのに?」


遠藤さんはよく分からなさそうだけど私もこれに関してはなぜ喧嘩していたのか分からない。


「はい。何か結と同じ位可愛い子と喧嘩してたから止めたら投げられました」


「え?投げられた?」


遠藤さんは本当によく分かんなそうだけどここで私の正当性を証明したいと思う。私は投げられたけどあの日は悪い事をしていないと信じたい。


「なんか、その時は話した事なかったんだけど乱闘になりそうだったから止めたらどえらい怒鳴られて投げられました地面に」


「……泉ちゃん本当に笑えるんだけど。それネタとかじゃないんだよね?」


遠藤さんは珍しく真面目な顔をして聞いてきたから私はしっかり頷いた。


「もちろんマジですよ。止めたのに投げられて痛すぎて制止でしたよ私」


「泉ちゃん……ごめん、腹筋が痛い。結ちゃん気性の荒い動物みたいだね、是非会いたい。てか、もう本当に笑える。愉快」


遠藤さんはさっきよりも更に笑っていて私の正当性をまた詳しく言っても笑い続けていた。遠藤さんは本当にゲラゲラ笑ってたけどまぁ、とりあえず友達ができたってのは良い事だからもう良しとする。

結は来ないと思うけど遠藤さんが会いたがっているし一応は結を誘ってみようと思う。


私はその日きっかり十時でタイムカードを切ると従業員割引で店の料理を食べられるので食べてから帰宅した。


そして翌日は休みだったし中間も終わったからのんびりしてまたバイトに向かうけどその日は人がいなくて社員と私と店長だった。私のバイト先は今年の春に大学生と高校生が卒業とかで辞めて新しい人が全然入らなくて今人手が足りないから社員が応援で来るんだけどバイト仲間がいないとマジつまんなかった。店長は優しくて好きだけどこんなおっさんと話す事はないし暇だ。


その日も次の日も私は店長と社員とバイトをして、またいつもみたいに学校に向かった。


中間テストが終わって晴れやかな気分で登校できるのはこの学校に入って初めてだ。私は珍しくるんるんしながら学校に行って気分良く勉強を始めたのに学校行事の話をしなくちゃならなくなってダルくて沈んでいた。たまに授業の時間を割いてこういうどうでも良い事始まるけど何でこんな無理して仲良くせないかんのだ。



今日の話し合いはもうすぐある体育祭だ。体育祭とか運動できない私にはマジでどうでも良いし休みたいけど出ないと行けないのが学生。何か楽なやつないかな、と思うけど綱引きとムカデと二人三脚位かな?あとはリレーと騎馬戦とか面倒臭くてできなさそうなやつだしそれにしよう。


先生が進行して難なく決まったけど私はなぜか結と二人三脚だった。綱引きとムカデは皆に混じって適当にやれば平気だけど結と二人三脚って身の危険。転ばしたら首飛びそうだよ私の。結は大体のリレーと二人三脚に出るみたいだけど運動ができるだろう結の足を引っ張るのが目に見えていた。


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