第3話 転移した先は・・・
「ここは、夢で見た場所……」
劉が目を開けて見たものは最近夢に出てくる草原だった。
「後ろを振り向くんだっけ」
劉は夢の続きを再現しようと後ろを振り向く。
「ブモォォォッ!」
「え」
振り向いた視線の先には猪のようなものがいた。その猪のようなものは体格が5mもあり、荒々しい息を吐き、こちらを見ている。
「も、もしかして……」
嫌な予感がした劉は逃げ出した。
「ブモォォォッ!」
「なんで追ってくるの!?」
猪のようなものが劉の後ろを追いかけていた。
(このままじゃ追いつかれるっ)
運動が得意じゃない劉はもう息が切れ切れだ。辺りを見渡すがなんにもなかった。ただ、平面の草原が広がっているだけだ。
(なんでなにもないの!?)
ゲームや本ではこういう時誰か助けてくれたりするが、現実ではそうはいかない。
(僕が自分でなんとかしないといけないのか……)
「ハァハァ、ハァハァ」
肩で息をしながらなにかないかと辺りを見渡しながら、頭の中でなにか策がないか考える。
「……なにも思いつかない」
自分の無能さに一旦足を止めてしまった。
「ブモォォォッ!」
猪のようなものが迫ってくる。
「こうなったら!」
劉は猪のようなものと向かい合った。倒すしかないのだ。そう覚悟を決めたとき、風が吹き、周りの雑草が揺れた。
『あなたの勇気に免じて助けてあげる』
声が聞こえた。
その声は劉の頭に直接響いた。少しくぐもっているが、聞いたら忘れられないそんな声だった。
「だ、だれ?」
劉は周りを見渡すが自分と猪のようなもの以外いない。
『話はあとで。先にあの猪を倒さないと』
頭に響く声が言うと、猪のようなものの足が雑草に捕まえられた。そしてズシュッと草で作った槍のようなもので一刺しされた。猪のようなものはそのまま倒れた。しばらくはピクピクと動いていたが、それも止まった。死んだのだろう。
『終わったね』
そう聞こえると同時に劉の目の前に光が集まった。その光がなくなるとそこには小さな妖精がいた。
「妖精?」
「正解!私は木の妖精のルゥニィ」
今度は頭に直接響く声ではなく、透き通った綺麗な声が直接聞こえた。
「ルゥニィさん?えと、助けてくれてありがとう」
「ルゥでいいよ〜。それと敬語なんてしちゃだめだからね」
パチリとウインクするルゥニィ。
「ルゥはなんで僕のことを助けてくれたの?」
「あなたの勇気に魔が差しただけ」
ルゥがなんでもないように答える。
「勇気なんてないよ……あったとしてもそんなものいらない」
「勇気はあるよ!」
ルゥが大声を出した。
「あなたには恐怖に打ち勝つ勇気がある!いらないなんて言っちゃだめ!!」
「ご、ごめん」
「分かればいいの♪」
「・・・・・」
僕がルゥの変わり身の速さに呆気にとられているとルゥが聞いてきた。
「あなたの名前は?」
「え?」
「あなたの名前教えて貰ってない」
「ああ、そっか。僕の名前は星屑劉」
「リューっていうんだぁ」
「なんか言い方が違うような……?」
「そんなことは気にしない。それよりも行こ」
「行こってどこに?」
「私が住んでるとこ♪」
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