第4話 こいのばいおんと

女子どころか友達を今住んでいる部屋に招待するのは初めてなので緊張する。いや、汚いとかは心配していない。僕の部屋は整頓されている。原毛や紡いだ糸はそれぞれに分けて、天井まで組んだ(北欧の安い家具屋のセットでつくった)棚にきちんと色や素材別に分かれている。そういう問題じゃなくて自分のテリトリーに他人を入れるのが初めてなんだ。明らかに自分の普段とは違う行動を嬉々としてとる自分に僕は戸惑った。まるで誰かに操られているかのようだ。


戸惑いながらも駅まで蜂谷さんを迎えにいった。「シフト思い切って休みにしてもらった甲斐がありました!!!!!」仕事も休ませちゃったのかい僕は。

部屋に入った彼女は、僕の部屋を褒めてくれた。「お店よりきちんとしてるし、お店にもなかった本がある!」なんだろうこのグイグイくる感じ。嫌いじゃない。

ところが僕はやらかしてしまった。紡ぎ方を教え、彼女が一人で糸車に向かったのをみていたら、うっかり眠ってしまったのだった。 こんなの初めてだ。何もかも初めてづくしだ。自分で自分がコントロールできない。どうしちゃったんだ。


起きてすぐ謝った。蜂谷さんは「リラックスしてくれてるんですよね!寝顔、可愛かったですよ」と心を溶かすような笑顔。あろうことか、付き合ってほしいとあっちから言ってきた。運命を感じるって。「私あなたみたいな人をずっと探していたんです。とうとう会えたの、本当に嬉しい。」



どういうことなのか、僕にもさっぱりわからない。でも、とてもうれしい。とても。

こんな気持ちははじめてだ。これが恋ってやつなのか。体の奥がじんわり痛む。これが恋の痛みってやつか。


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