第13話
有給休暇を使い、ゆっくりしながらたまにイシュタル様に会いに行ったり、お店の下準備をしたりしているが、向こうの世界に下準備に行ったとしても元の世界での時間は10分や20分ほどしか経っていないので1日をすごく長く感じてしまうんだけどね。
まだまだ有給は残っているので、今日はどんな料理をお店で提供するか考えることにする。
いまはお店のカウンターに座ってノートとペンとレシピ本を5冊ほど並べている状況だ。
お店自体はカーテンで外から中を見えないようにしているので誰かに見られるという心配もない。シャドウは個人的な用事のためにいまは席を外しているがしばらくしたら戻ってくるそうだ。
試作をする予定なのでシャドウには試食してもらおうと思う。が、イシュタル様も試食したいですって上目遣いで可愛くおねだりしてくださったので試食ができたら持っていこうと思います。
沢山の人数を一気に対応するのは大変なので、お店の席数は6人で満席になるようにしてある。テーブルが三つ、椅子がそれぞれ二脚。カウンターにはこの世界のお金に対応した特別仕様のレジが一つ。
出来上がった料理を置いたりできるようにカウンターはそれなりに広く作ってあるが、誰も来ない時はカウンター内でゆっくりできるようにしてあったりする。
なので、椅子に座ってノートに書いているのだが、この世界の日付の感覚が自分が住んでいる世界とほぼ同じというのがありがたい。なので、一週間として献立を考えることにする。
月曜火曜とお店を開けて水曜は休みにして木曜金曜土曜にお店を開けて日曜を休みにすることにする。理由は簡単、いきなりフルでやってみて体力気力がもたないからだ。
だって、自分はプロの料理人ではない、無理しても長続きしないし、最初から100パーセントの力を出しても後々しんどくなるだけだ。そういうわけで週休2日でやるつもりだ。
日曜日の休みに月曜日の仕込みをしたりお店の掃除をしたりしてから元の世界に戻って、2日休んで改めて異世界に行き、月曜日から頑張る。まぁ、元の世界では7時間しか経ってないんだけどね。
そういうわけで、献立を考える。
沢山料理を一気に作るのは一人で回すつもりだから仕込みだけで大変になるので、日替わり定食を一種類、作ることにしようと思う。
月曜日は唐揚げ定食にしようかな。味付けは今週は醤油、来週は中華風みたいにしよう。
火曜日は生姜焼き定食と焼肉のタレを使った焼肉定食を週替わりにしようかな。木曜日は月火が肉だったから魚にしよう。焼き魚にしたり、煮魚にしたり、フライにしたり、週によって木曜の魚料理は変えることにする。
金曜日はカレー定食で決定、具材は週によってこれも変えて、今週がポークカレーなら来週はチキンカレーとかね。もちろん一般販売されいるカレールーを使いますとも。スパイスから調合なんて無理。
土曜日はどうしようかな、うーん、悩む。とりあえずご飯と味噌汁とメイン料理で考えたけど土曜日だけパスタにしてみようかな。
簡単ミートソースパスタとか、グラタンとか。うん、とりあえずこれでやってみよう。
あとは実際にやってみて、変えていけばいいだろう。
問題はどれくらい仕込めばいいか、なんだけど、これもお店を実際に開けてみないことには何とも言えないので、まずは最初は50食限定とかでやってみよう。
お客さんが入るようになったら作る量を増やしていけばいいだろう。
さて、では試作に入ろうかね。
今日は何を試作しようかな。すぐ作れるもの・・・、うん、よし!簡単ミートソースパスタにしようかな。
椅子から立ちあがり調理場に行き、設置された業務用冷蔵庫の扉を開ける。
欲しいと思った食材が冷蔵庫の中に現れる仕様となっているそうで、開けてみると確かに欲しいと思った食材が並んでいる。
乾燥パスタに豚ミンチ、玉ねぎ、ミートソースパスタのレトルトパウチ、トマトケチャップ、お好み焼きなどにかけるソース、牛乳。
鍋を用意してお湯を沸かす。調味料の棚から塩をとりだしてパスタの袋の裏面に書いてあるお湯の量に対しての塩の量を計り鍋の中に入れる。
で、お湯が沸くまでの間に玉ねぎをみじん切りにして、フライパンを取り出して火にかける。
フライパンを熱したら油を入れてミンチを入れる。
すぐに混ぜるのではなく、少し焼き目をつけてから混ぜる。かたまりが少し大きぐらいの方が食べた時に食感が良くなるのでバラバラにしすぎないように気をつける。
そこへみじん切りの玉ねぎを加えて、玉ねぎが透き通ってきたら一旦火を止める。
ミートソースパスタのレトルトをここで温めずに封を切り、中身をフライパンに入れる。
で、トマトケチャップ、ソースをさらにくわえる。
トマトケチャップとソースは同量またはソースをやや少なめにする。
ソースはウスターとかではなく、濃厚なタイプを入れて欲しい。さらに言えば、甘いタイプのソースがいい。オタフクのマークのがさらにいい。
で、それらを入れたあとぐるぐるとかき混ぜて改めて火にかける。沸騰したら弱火にしてしばらく煮込む。
一からミートソースを作るのは大変だが、もともとできているミートソースならば簡単だ。ただし、たっぷりソースをかけたい派な自分としてはカサ増しの意味を込めてこの簡単ミートソースを作るのだが、家族や親戚には好評でミートソースパスタといえばこれが定番になっている。
で、お湯が湧いたのでここですぐにパスタをいれるのではなく先に入れて欲しいものがある。塩はさっきいれたので塩ではない。
そう、牛乳!!沢山入れなくていい。ティースプーンで一杯または小さじ1。お湯がほんのり白くなるぐらい。で、パスタを入れる。
あとは表示通りに茹でるだけなのだがなぜ牛乳を入れるのか?と疑問に思うだろう。
牛乳入れるとパスタが鍋にひっつかない。さらにパスタ同士もひっつかなくなるのだ!!
つまり、鍋を洗う時にすっごい楽なんですよ!!
鍋の底にパスタひっついて洗う時にイラッとすることない?それが無くなるって良くない?で、茹で上がったパスタがちょっと放置したらくっついたりすることも無くなるのでぜひ、茹でる時に牛乳をちょっとだけ入れて見てほしい。
騙されてと思って、ぜひともやって見てほしい。
で、表示の通り茹でたパスタをパスタソースに鍋からトングや菜箸を使って移す。
え?ザルにあけて水分を切らないのかって?めんどいじゃん。そのままうつしても水分が少し足されるだけでソースが濃いから味が薄くなるってことないからね。
で、しっかりと混ぜ合わせてお皿を三枚用意してそれぞれに盛り付ける。
自分のは少なめに、お二人の分は多めに盛り付けたあと、冷蔵庫の中から粉チーズと温泉卵をとりだす。
温泉たまごは好みだが、半分まで食べてからトッピングして味変をしてもいいと思うので用意をする。
「よし、出来た」
でも、定食として出すならばパスタだけというわけにはいかないのでこれにスープとサラダもセットにした方がいいだろう。
さて、試食してもらおうかな、とお盆にパスタのお皿を乗せて調理場から出れば、すでに椅子に座っているシャドウとイシュタル様
「えっと、フォークを持ってきますのでちょっと待っててくださいね」
「はい、それにしても美味しそうですね!」
ニコニコ笑顔のイシュタル様はパスタに釘付けになっている。
すぐにフォークと粉チーズ、温泉卵を持ってきて、好みで使ってくださいねといって、いただきますをしてからそれぞれ食べ出す。
自分も一口、うん、ふつうにおいしいと思う。
次は粉チーズをふりかける。で、もう一口。チーズは正義だと思う。で、半分まで食べて、温泉卵を割って乗せて、軽く崩して絡めながら食べる。
「これは、まろやかになっておいしいですね」
シャドウも温泉卵を絡めながらもぐもぐと咀嚼する。イシュタル様も温泉卵を絡めながらおいしいですと言ってくれる。
「次は唐揚げを試作しますね」
「唐揚げ!ではご飯はたっぷりお願いします!!」
「はい、もちろんです」
そういって食べ終わり、イシュタル様はごちそうさまでしたといって帰っていき、シャドウは再び用事を済ませるために外出する。
自分は定食のサイドのサラダやスープを何にしようかを考えながらその日は過ごしたのだった。
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