復讐は終えていた


愛しい貴女へ


これが貴女の元に届く頃には私は死んでいるでしょう。それも、貴女の手に掛かって。

さて、私は貴女に謝らねばならない事があります。

私が最初、貴女に近付いた理由はそもそも、知人に『女を口説いて関係を持て』と言う無茶な命令故に近付きました。

ええ、貴女が殺した三人です。アイツらが遊びで僕をけしかけたのです。

私はこの手紙を書いた後、知人に手紙を送るつもりです。『自分はこの女を孕ませた』という手紙をね。

アイツらならそれを聞いて面白がって僕の友人を名乗って貴女の所にやって来るでしょう。

貴女はそれを見て疑心暗鬼になって殺すでしょう。ありがとう。

そうして、怖がった貴女の夫は、死ぬでしょう。貴女の手で。


そうして、貴女は皆を殺し、私も死に、貴女と子どもだけが残るでしょう。

そう、私の愛しい貴女と、私の愛しい子どもが残るのです。

貴女は私と関係を持つ時、避妊薬を飲んでいた事を知っています。だから、少し薬に細工させて貰いました。




本当に有り難う御座います。私に人を好きになるという事を教えてくれて。

本当に有り難う御座います。私の知人を殺してくれて。

本当に有り難う御座います。私の子どもを産んでくれて。

私は殺されますが、悔いは有りません。

最初は知人の無茶振りでしたが、貴女が好きになっていました

さようなら。私達の子どもを大切にして下さいね。



手紙が地面に落ちる。

手から力が抜けた。

全身の感覚が喪くなる。

だのに、背筋と手足が凍り付き、痺れていた。

身体の中で心が暴れ蠢き、それが全身をぐちゃぐちゃにして狂わせる。

嘘だと声を大にして叫びたい。

けど声が出ない。

「Δ○Ψ×θ△※◎Συ!」

警官が何か言っている気がする。が、何も聞こえない。

手紙を否定したいが、不安が拭えない。どころか体を端から蝕んでいく。

不安が手の先、足の先、頭の先から根を張り、それが心で大きな不信の花を咲かせる、


誰?

誰なの?

あの子は   誰?


私は自分が気を失った事を、意識を取り戻してからやっと気付いた。

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