復讐の遺言は始まった
綺麗に掃除をしましょう。
塵一つ無く。髪の一本無く。物一つ残さず。指紋一つ残さず。血の染み一つ残さず。匂い一つ残さず。消してしまおう。何一つ残さずに。
私はこの子と二人。生きていく。
父親は居ない、そんな可哀そうな子。
どうか私を許して。
家中の排水溝に髪の毛を溶かす為に買って来たパイプクリーナーをありったけ流し入れる。
不甲斐無い父親は居ない。
証拠も何一つ無い。
もう、これで御仕舞。
ピン・ポーン
お仕舞だった。
「貴女を逮捕します。」
ガチャリ
手首に噛み付く冷たさでやっと気付いた。
「嗚呼、終わったのか。」
私はあれよあれよと裁判迄終えて今、檻の中。
「この前、手紙が届きましてね。どうも、だいぶ前に書かれて時間差で私の所に届く様になっていたようで……………。
内容は『自分はもう直ぐ殺される』っていうものだったんですが………。」
私を檻に追い込んだのは最初に殺したアイツだった。
死ぬ事を事前に知って、刑事に手紙を送っていたらしい。
「自分は自分の女の為に人を殺しました。
女が私に人を殺すように依頼し、それが終わった今、私は殺されるでしょう。
しかも、その後で私の友人にまで手を挙げるかもしれません。
刑事さん、虫の良い話だと思いますが、どうか私の友達を、私の無念を、あの女に正義の裁きを、下して下さい!」
手紙にはそう有ったらしい。
ご丁寧に私が殺人を依頼した時の音声や動機の美人局の証拠迄用意して。
お陰で私は証拠の数々で連続殺人鬼として檻に22年も繋がれる破目になった。
これがあの男の復讐………………復讐の遺言か。
お腹はもう膨らんでいない。
裁判の最中に産気づき、私は今、一時の母になっていた。
でも、私は檻の中、あの子は檻の外。
あの男は目論見通り、私とあの子を引き裂いたのだ。
でも、私は負けない。
たとえ何年経つ事になっても、あの子との幸せを掴む。
死人の復讐が!私の未来に手を出させるものか!
しかし、これであの男の復讐は終わっていなかった。
本当の復讐の遺言はこれで終わりでは無かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます