果樹園

月のきおん

第1話

果樹園


男達家族は最盛期になると忙しい。


葡萄畑にはいくつかの種類の葡萄が実っている。


今はこの果樹園はもう60年以上も続く。

元は男の両親が始めた農園。


今は息子夫婦が一緒に手伝っているから男達は嬉しくて堪らない。


ワインにする葡萄を作り製造迄行なうちゃんとした工場もある。


製造所には何人か人を雇うまでになる。


今日は家族と社員達と皆で焼肉パーティーをした。


なかなか全員が集まる時が無いから皆で話は尽きない。


そんな中 社長が皆の夢を聞き出した。


ささやかな夢 果てしない夢。


色々な夢がある 皆は夢を言い出しながらはにかむ笑顔になった。


社長の夢は国内だけの工場の手作りワインを世界的に広げたい。これが社長の夢。


この果樹園は観光客らも時期になる葡萄狩りや工場見学に来るようになる。


観光係の女性が何か質問が有るか客に聞いたら、中学生の男の子が葡萄酒はワインと同じか、と聞いた。


同じですよ、と答えて日本では明治時代頃には既にあり薬としてもあり滋養強壮に良いのです、と女性は言った。

観光客達は静かに聞いている。


男は最初はこの果樹園を継ぐつもりは無かった。東京の大学に進学しそのまま東京の会社で建築関係の営業をしていた。


だが、大学時代から付き合っていた奥さんと結婚して子供を育てるには自然が豊かな方が良いと言うことでUターンしたのだった。


ここまで来るには決して順風満帆な道では無かった。


農家を継ぐのは借金も有り、自然が相手な分簡単に行く訳でも無い。


東京時代の頃の方が良かったと思う事も多々あった。


街の地域活性化で観光地として昔からのやり方が正しいのか正しく無いのか。


男は悩んだ。

果樹園を日本一、世界中にもこの葡萄やワインが有名になると言うこの地方の田舎町で夢を叶えたいと思っていた。


こないだの焼肉パーティーでそんな夢を皆の前で話したのは本当だ。


息子夫婦はそんな父母を見て夢を叶えてあげたいと思うのだ。


今日はもう寝よう…。


男は風呂に入って湯船の中で寝てしまい、妻に起こされた。

「俺も歳を取ったな。風呂で寝ちまうなんて」


そして直ぐ寝てしまった。

明け方に夢を見た。


着ぐるみを着た大学時代の男が海水浴をして皆で焼肉を食べているが何故だか宝くじを手に持っている。


目が覚めたのは午前6時過ぎだった。

それにしても妙な夢を見た。


男は今まで宝くじなど買った事は無かった。


「そうだ。今丁度CMで流して居たな。一回だけ買ってみるか」


一攫千金はそんな簡単な事でもない。


男は妻に内緒にして遂に宝くじを一枚だけ買った。

たった一枚だけ。


勿論息子夫婦にも、内緒だ。


「もし当選したら…。」


男はふと呟いた。

「そうだ。息子夫婦に世界一周の旅でも」


男は工場の見周りをしながら考えていた。


そして男は宝くじの事を忘れて居た。


ある日。


「今日はこのワインどうだ、65年物、母さん」


男夫婦は夕食を食べている。

男は妻にワインを勧める。


「そういえば今日洗濯しようと部屋にあったズボンのポケットに入っていたのよ、これっ!」


シワくちゃになった宝くじが一枚テーブルの上に置いてあった。


「あっ、これは。」男は思い出した。


「珍しいわね。あなたが宝くじを買うなんて」


「当たったら和夫らに旅行をプレゼントなんてことを考えてたんだ」


そして一口ワインを飲んだ。


パソコンで当選発表を見て確認した。


肉じゃがを頬張りながら、パソコンとにらめっこ。


「えっと?! ととととっ! 」


この一枚の宝くじがなんと二等が三千万だが。


「母さん、当たった! 二等だ!」


妻は直ぐ二階に住む息子夫婦の所に行った。


「それでね」


息子夫婦に説明し始めた。


「お母さん、それ本当に?」


息子は驚きそして嫁も驚いた。

後から男も息子夫婦の元に来た。


知っているのはこの4人だけだが、4人は辺りを見渡して誰も居ないのを確かめる。


普段からこの家族は毎日葡萄の事しか考えた事が無かった。

宝くじには縁がない様な人間達。


それでも金の事を考えるとこんな風になるのか。

人間とはこんなにも単純に出来ているのだ。

それで良いのだ。


男の夢はワインを有名にする事だったが、宝くじが当たったから夢は叶わないという事でもないのだが。


今までが真面目過ぎたのだから。

男は少しだけ寄り道をしてしまった。


そして又夢を追うのだった。









































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