拝啓、マイホーム失敗しました。

T-たっくん

第1話 拝啓、そんなに飛ばしますか?

 拝啓、マイホーム失敗人間様

 はじめまして。私は、井川 文雄 45歳です。昨年マイホームを購入しました。 この度、普通電車しか止まらないような小さな駅前に一戸建てを購入しました。駅も近く、幹線道路から少し入った住宅街にある小さな一戸建てです。自由設計で、小さいながらも私としてはいい家を購入出来たと喜んでいました。ベランダを広く作り、洗濯物を干すにも十分すぎる広さ。駐車場はやや小さめですが、大きな花壇を作りきれいな花を植えようと考えていたり、夢は広がる一方です。環境は、古くからの住宅街ですので、家の前の道は車一台分ぐらいの道ですが、我が家の車は小さいですので特に気にしていませんでした。

 引っ越しの日、夢と希望を胸にわくわくで荷物を運んでいました。

 「プップー」

 車が来ました。引っ越しを中断し、一度トラックを移動しました。くるっと回ってまたトラックを家の前に付けて引っ越し再開です。

 「プッププー」

 また、車が来ました。また中断しトラック移動です。

 「プップー」「プップップー」「プーー」

 何度も何度も車が来ます。そう、ここは幹線道路の信号を回避するための抜け道になっているところでした。休日の引っ越しにも関わらず、この交通量。今日は何か祭りがあるのかな?とこの時はあまり気にしていませんでした。

 翌日、平日でしたがうれしさのあまり早起きし、ベランダに出てみると、狭い道にも関わらずそこそこのスピードで通過する車が・・・この道は車一台分ぐらいの狭い道。私の個人的感覚では、スピードを出すのが怖く感じる道です。それにも関わらず、そこそこ皆さん飛ばしていきます。

 気になって、幹線道路を見に行きました。幹線道路の信号が長く、右折するのに時間がかかるので、我が家の前の裏道に入り、信号が変わる前に右折後の幹線道路に出たい思惑があるということが分かりました。

 ある日、自宅に帰るために家の前の道に差し掛かかっていたところ、目の前から車が・・・当然、狭い道なのでバックしたりして避けなければ通れません。そんなことが、毎日毎日あります。この地域の人が帰宅で使う場合にそのようになるのは我慢できます。しかし、通り抜けの車が多すぎてこういうことが毎日あります。

 せめて一方通行にするか、子供たちが通学する時間だけでも通行止めにしてほしいと匿名で市に相談しても、地域住民の理解が得られないとの理由で取り合ってくれません。地域住民である私を含め近所の方々は一度も市からこのようなお話を聞いたことはないのですが、なぜか地域住民のほとんどは反対しているらしいです。

 夜買い物の為、家を出ました。目の前を車がすごいスピードで通り過ぎました。思わず叫んでしまいました。しかしその車は止まらずにそのまま行ってしまいました。そんなことが毎日あるこの家は、もはや私の夢の家ではなくなりました。もう毎日がストレスです。

 マイホーム購入する場合は、家を購入するだけではなくその環境を購入することである事を私は忘れていました。不動産屋さんはそんなことは教えてくれんません。自分の調査不足でしたが、悔やんでも悔やんでも悔やみきれません。

 マイホームを購入する人たちへ

「日本はもはや、他人に優しいおもてなしの国ではありません。時間に追われた余裕のない人々が、狭い国土の中行きかう住みにくい国です。言い方は悪いですが、他人の事なんてお構いなしに、どんなとこにも車は入って来ます。玄関前が車が通る道に面している家の購入をお考えの皆様はご自身で環境を調査することをお勧めします。」

 今日もまた、物凄いスピードで車が通っています。


敬具

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る