銀の悪魔

@tamakichi3

第1話銀行強盗

がんさん、岸本の裏は取れましたね。」

「ああ、後は戻って報告書まとめたら終わりだな。」

新宿歌舞伎町近くの汚い雑居ビルの1階にある今にも潰れそうなぐらい汚いラーメン屋の隅のテーブルで二人の男が話している。新宿署刑事の野中雄一は一緒にコンビを組んでいる岩山徹と少し遅い昼食にラーメンを啜りながら午前中から行なっていた捜査について話していた。野中は私立大を卒業して直ぐに警察に入り最初の2年は中野の交番勤務だったが引ったくり事件を手際よく解決した功績で新宿署に転属になり刑事課に配属され岩山とコンビを組むようになった。一方に岩山は高校卒業後警察学校へ行き卒業した後叩き上げで所轄の刑事になって35年犯人逮捕に尽力してきた一人だ。

1週間前歌舞伎町で強盗事件があり、直ぐに犯人は捕まったが供述どうりかどうか裏を取っていたのだ。ラーメンの汁まで飲み干した二人はテーブルの上にきっちりとラーメン代を置いて席を立った。通りに出て署に向かって歩いていると岩山のスマホが鳴った。

「はい岩山。はい、それで場所は?それなら近くなのですぐ向かいます。」

その電話の様子に野中にも少し緊張しながら聞いた。

「何ですか?又強盗ですか?」そう言って岩山を見ると「銀行強盗だ。菱丸銀行新宿支店で強盗犯が立て籠もってるらしい。直ぐ向かうぞ。」二人は足早に菱丸銀行へ向かった。

現場の菱丸銀行近くまで来ると丁度警官達によって規制線が張られているところだった。二人は規制線をくぐると刑事達が集まっているところに入っていった。

「あ、今井さん。中はどんなもんですか?」岩山は近くにいた同僚に声を掛けた。

「犯人についてはまだあまり情報はないが、中から逃げ出した行員の話によれば被疑者と思われる人物がガソリンのタンクを持って火をつけると脅したらしい。中には行員が15人程と客が8人程いるらしい。」犯人が銀行へ入ったのが丁度昼時で行員達も交代で昼に入るタイミングだったのが幸いしていつもより中にいる人は少なかったらしかった。

「近くの防犯カメラの映像をチェックしてきます。」そう言って岩山と野中は規制線をくぐり銀行の周りにあるビルへ向かった。

「岩さん、これ長引くと本庁から来ますかね?」

野中がそう言うと、当たり前だろと言わんばかりに顔をしかめて

「本庁さんが出張って来るとなるとまたややこしくなるな」そう言いながら野中を促し片っ端から防犯カメラのあるビルを訪ねて歩いた。

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