痴れた世界の住人の夢
私は無味乾燥な「ここ」に生まれた、気づいたら彼等がいた。彼等は私に色を沢山塗りたくった、それはもう辺り一面にぶちまけるほどに。
でも彼らの色には染まらなかった、染まれなかった。
ここで生まれた私は空洞が形を得たもののようで、どれだけ彼らが染めようとも空洞に飲まれてしまっては仕方なかったみたいですね。
ただ暇つぶしに彼等は外装を取り付けてくれた、彼ら自身の血と肉と臓物で出来たおぞましい何かを。
おかげで私は色を纏うことができるようになりましした、それは歓喜の極みで虚無の極みでもあったの。
私は初めて無味乾燥などうしようもなく愛しい世界から出てみることにしたんだ。けれどどこへ行こうとも、私の内側には愛しくもどうしようもない無味乾燥な世界はあってどうしようもなかった。
気づいたらみんな居なくなってしまった、みなの置き土産を受け取っておこう。
置き土産は呪詛と祝福の塊だった。しかしながら空洞な私には半分以下しか受け取れなかった。きっとそれは彼等の夢の塊なのだろうけれど。
それはとても残念だった、だが仕方がない。ただ彼等の見ていたものは少しは見えるようになったから良しとした。
私は運動する空洞、痴れたまま渡り歩こうか。どこまでも夢を抱えたままに、大丈夫ここは私の庭であり私だもの。
これを覗いてるそこの君?良かったらこっちへおいでよ、君の夢に対する捉え方がここへの鍵だよ。なんてね?
こんな事してるからあの人は壊れたんだろうね、違うか、元からだろう。
安心しておくれ、「ここ」は全て架空の場所で架空の存在だから「ここ」へは来ることは無いんじゃないかな?望まない限りね。
では新しい似た者が来る事を祈って。
痴れた世界の夢の底で、端で待っているよ。
それでは良い夢を
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