麻痺~走れメロス~
Ley
第1話
「あの男は帰って来ると思うか」
「いや、帰らぬだろう」
ここに三日は口が開けば人はこの話をする。
いい加減飽きてもいい頃だが、オウムのように繰り返す。
繰り返すことで感覚を麻痺させていく。
自分もそうだろう。
知人が、友人が、仲間が、親戚が連れ去られ殺されることに慣れてしまった。
悲しさより先に訪れる安堵。
自分ではなかった。
私は殺されなかった。
そんな自分に嫌気がさした。
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