私の心臓を持っていけ

ねど

0.プロローグ

 農夫エドワードは、あまり綺麗な容姿ではないため、村の中では嫁に来てくれる女がいなかった。

 彼の見た目では皆、夫婦となり毎日ともに過ごすことを考えられなかったのだ。そんな彼の元に、ある時一人の美女がやってきた。

 それは嵐の夜だった。女は薄いガウンコートのみを羽織って、エドワードの家の戸を叩いた。嵐だったので薄く戸を開けたエドワードだったが、戸の前に立つのが線の細い女だとわかった時、彼はすぐに戸を大きく開け、彼女を迎え入れた。

 何もやましい気持ちがあったからではない。女がこんな時間に薄着で、しかも大荒れの天候の中、一人で佇んでいるのが大変なことだと彼は感じたからだ。

 エドワードはすぐさま毛布を出し、温かい牛乳を彼女に渡し、自分が寝る場所を譲り、その夜から冷たい床で寝た。

 彼女の名はヘレンと言った。ヘレンはあの夜に、なぜ外に出ていたかという理由を話してはくれなかった。そしてそれを深入りして聞くのは野暮なことだと、エドワードは知っていた。


 そんな出会いをした二人が親しい仲になるのは遅くなかった。

 あっという間に共に過ごす日が数十、数百の日を越えた頃。彼と彼女は夫婦となった。二人は夫婦になった後、それなりに楽しく暮らしていた。


 だが村は、そうではなかった。

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