第六章 神殿と辺境伯

第一話 神殿拡張!?


 ヤスが惰眠を貪っている間に、マルスは陣容を固める事にした。


 セバス・セバスチャンには対外的なことをしてもらう事にした。

 眷属であるエントやドリュアスたちは広場と領域を担当する事になる。神殿や魔の森に発生している魔物の討伐を行うのも主な仕事とした。セバス・セバスチャンはヤスの眷属筆頭として、これから来る事が想定されている国からの使者や貴族の対応を行わせる。セバスの従者としてドリュアスをつける事になっている。


 新たに眷属になったツバキは、ヤスの身の回りの世話を行う事になる。

 ドリュアスは眷属で無いために、ヤスの寝所に入る事ができない。料理は、ドリュアスが多少できる為に最低限のことをツバキに教える事に決まった。


 マルスはツバキとセバス・セバスチャンや眷属たちの種族を偽装する事に決めた。ヤスから聞いていたエルフ族の移住がいいタイミングごまかしになると考えて、ハーフエルフやダークエルフなどの長命種に偽装することにしたのだ。


 内側と外側で眷属を分けたことになる。

 セバス・セバスチャンが外交を行い。ツバキが内政を行う。


 全てはマスターであるヤスの為に・・・。


---


 ヤスが空腹で目を醒ましたのは10時間くらい経過してからだった。


 肉体的にも精神的にも10時間もの睡眠を必要にするほど消耗していたのだ。


「マスター。お食事はいかが致しましょうか?」


「ん?ツバキか?そうか眷属なら入れるのか」


「はい」


「食事?料理ができるのか?」


「簡単な者ですが、セバスの眷属であるドリュアスから学びました」


「そうか?簡単な物で構わないから作ってくれ。俺は、3階のリビングで待っている」


「かしこまりました」


 エレベータしか作っていなかった為にヤスとツバキが揃ってエレベータに乗って3階に向かった。ツバキはそのまま倉庫に向かった。使える食材を取りに行ったのだ。


「マルス。討伐ポイントでパソコンを交換したら、エミリアの機能の一部を担当させる事はできるか?」


『可能です。監視機能の付与も行えます』


「監視機能?」


『内部。広場。領域内の状況を表示する事ができます』


「エミリアの機能だよな?」


『はい。パソコンの種類によりますがもっと詳細に表示できます。情報の蓄積も可能です。監視カメラの映像を表示するような機能が付与できます』


「わかった。監視機能とか誰でも見られるよりも・・・。書斎が欲しくなるな」


『はい』


 ヤスは少しだけ考えてからある忘れ物をしている事を思い出した。


「あぁぁぁ!!!忘れていた。マルス。FITに積んでいた荷物が有っただろう?」


『はい。一つの木箱がありました。助手席に乗っていました』


「違う・・・。あっそうだ。後部座席を戻していなかった。後部座席のフロアに置いた状態だ!マルス。確認してくれ」


『了。ツバキを向かわせます』


「頼む。荷物は魔通信の交換機だ。設置と運営を頼む。設置場所は、魔力があれば大丈夫だと言っていたが、アンテナが立てば使えるようになるという事だ。食事よりも、先に設置を頼む」


『かしこまりました』


 ヤスはツバキがマルスに呼ばれて地下に移動したのをエレベータの動きで理解した。


『マスター。交換機が有りました。設置はどこにしますか?』


「どこがいいと思う?マルスが居る最奥部がいいと思うけど設置は可能か?」


『わかりません。確認して設置します。駄目だった場合には、神殿の屋上に設置する事にします』


「任せる。起動はボタンを押せば大丈夫という事だ」


『かしこまりました』


 ヤスはまっている間にせっかくだから書斎を作ってパソコンを配置しようと考えて、エミリアを使ってパソコンを物色していた。

 物色していたと言っても、ヤスが持っていた物が交換リストに出ているだけなので、高スペックな物ではない。店売りの物ではなく、ヤスの悪友が組み立てたパソコンだ。ノートパソコンは”BTO”で作成していたのでブランド名は存在しない。ヤスの友人たちのこだわりが詰まっているノートパソコンだ。高スペックではないが低スペックと言われるような物ではない。


 ヤスは、2階部分に書斎を作る事にした。同時に改築を行うときに階段を設置する事にした。エレベータだけでも良かったのだが、4階から3階。3階から2階に移動する為の階段を設置した。1階にヤスと眷属だけが入る事ができる部屋を作成して、階段を設置した。1階から2階に上がる階段だが普段は使わないように扉を設置しておく事にした。


 書斎は、大きめの机と椅子を設置した。

 簡単な調理ができるミニキッチンも設置しようと思ったが、ツバキの仕事を奪う事になりそうだと考えて書斎には作らずに隣にツバキ用の部屋と作った。アフネスの宿屋よりは少し広めで簡易キッチンをつけた。どんな設備が必要なのかわからなかったので宿屋と同じ様にした。ドライアドと聞いていたが、風呂とトイレは必要だろうと考えて、ワンルームマンションのようなユニットバスを用意した。


 2階部分には、ヤスの書斎とツバキの部屋を作った。ツバキと同じ広さの部屋なら後4部屋作る事ができる広さが残されている。


 次にパソコンを交換する事にした。

 設置できる部屋はヤスが日本に居るときに使っていた部屋と同じ程度6畳の広さで定義したので、使うパソコンも同じメインで使っていた物と交換する事にした。

 ディスプレイは4枚使っていた。構成も同じ様にする。ノートパソコンを寝室用に交換して、リビングには小型パソコンを1台と大型ディスプレイを配置する事にした。


---


 ヤスが自分の生活空間の充実を行っていたときに、ツバキは交換機を持って最奥部に来ていた。

 マルスが誘導したので戦闘もなく到着する事ができた。


 コアの近くに、交換機を置いてヤスから教えられた手順?で起動するとアンテナがしっかりと立った事が確認できた。


「マルス様。マスターのご指示通りになりました。問題はありませんか?」


『少し待ちなさい』


「はい」


 マルスは交換機の動作を確認してみる事にした。

 魔力を吸収しているのが解ったので、交換機に魔力を吸わせた。すぐに、魔力を排出しているのがわかった。どういう原理なのか理解できないが動作しているようだと判断した。


 交換機が魔力を発信している事が解ったので、発信された魔力を神殿の領域外に飛ぶように誘導した。


『面白い機能ですね。魔力に指向性をもたせているのですか?どうやって位置を把握しているのか?相手の位置は?いろいろ調べる必要はありそうですね』


「・・・」


『2つの端末の間を魔力が繋げるのですか?空間魔法というわけではなさそうですが・・・。マスターに端末を用意してもらえばもっと詳細に機能がわかるかもしれません。そうしたら、マスターが必要とする情報が手に入るかもしれません』


「・・・。マルス様?」


『ツバキ。マスターに最奥部に配置できたとご報告してください。少し調べてみます。何か解ったらマスターにご報告すると伝えてください』


「わかりました」


『来た道ならば魔物は居ません。今なら安全です』


「ありがとうございます」


 ツバキは、マルスの本体であるコアに頭を下げて最奥部の扉を閉めた。

 セバス・セバスチャンの本体があるボス部屋を通り抜けた。


 ツバキの本体も、ボス部屋に配置されているのだがセバスのように大木として真ん中に存在しているわけではない。天井の小部屋を守る様に配置されていて、天井の小部屋を隠す役目を担っている。


---


 ツバキが3階に戻ったときに階段の設置やリビングへのディスプレイの配置は終了していた。


「マスター。これは?」


「神殿の状況を確認する為に設置した。後でマルスに設定を頼もうと思っている。そう言えば交換機はどうだった?」


「最奥部に問題なく設置できました。マルス様が機能の確認をするとおっしゃっていました」


「そうか、それならいい。頼み事ばかりで悪いけど、食事の用意を頼む。ここで待っている。先に飲み物を・・・なにか果物を絞った物があると嬉しいな」


「かしこまりました!」


 ツバキは、ヤスからの命令を嬉しく思って、作りかけの食事の前に飲み物を用意する事にした。

 何種類かの果物を絞ってジュースにした物を魔法で少しだけ冷やしてヤスに提供した。


 美味しそうに乗ってくれるヤスを見ながら朝食?の準備を始めるのだった。


 ヤスは、ツバキが作ったジュースを飲みながら神殿や生活で必要になりそうな物を探していた。

 日本に居るときに使っていた物が全て交換リストに登録されているわけではない事は確認しなくてもわかる。家電でもいくつかは登録されていない。あれば便利だと思った電子レンジはなかった。オーブントースターは登録されていた。冷蔵庫もなかった。洗濯機は登録されていたが全自動洗濯機ではなく2層式の洗濯機だけだ。タオルや歯ブラシや洗剤まで登録されていた。食品も香辛料やバターなどはあるのがレトルト食品やお湯を入れて食べられる独身の友は登録されていない。

 基準がわからないが登録されている物だけでもかなり快適な生活ができると考えてできるだけ交換する事にした。


(書斎は2階じゃなくて4階にしたほうが良さそうだな。2階はツバキがの生活する場所にしよう)


 4階に書斎を移動して2階にあった書斎の場所は空き部屋にした。


 結局ヤスはリーゼの家やギルドを作る事をすっかりと忘れていた。

 思い出したのは、ツバキが食事を持ってきて、今日の予定をヤスに確認したときだった。

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