雨と涙
渋沢慶太
第1話 いつもと違う駅で…
いつも騒がしいこの街で今日は静かだ。
いや、実際は違う。
アスファルトと衝突する音。
コンクリートと衝突する音。
ビニールと衝突する音。
人間と衝突する音。
いつもと変わらない。
雑音であることに。
傲慢とも言えるこの雨は、我儘で、私に当たってくる。
痛い。
痛い。
…痛い。
私の頬には暖かな雫も流れる。
近くには駅がある。
この駅は好きだった彼にフラれた駅。
私はいつも手前の駅で降りるのに、今日は勇気を持って後ろについて行った。
そして、改札を出た彼を勢いよく手を繋ぎ、壁に押し付ける。
私が言いたい事を言った瞬間、窓の景色が変わった。
その瞬間に彼は3文字の謝罪で返した。
私は引きずり足で彼を追う。
傘さす人々の中で私は必死に彼を探す。
ずぶ濡れになった私を彼は見ることもなく、灰色の背景が目に映る。
屋根もないコンクリートに縋って、ただ、空を見ていた。
灰色に映る目に、雨雲は区別しやすく、それだからこそ、アスファルトに目線を向けた。
この凸凹で私の心を埋めて欲しい。
アスファルトに私を埋めて欲しい。
もう2度と彼と合わないように。
こんなことを考える私は傲慢なんだ。
そんな私も痛みが和らいでいく。
そしてこの街はまだ騒がしい。
でも、今の環境の方が好き…なのかも。
そんな私は我儘だった。
そして、私は……悪夢から解放された。
雨と涙 渋沢慶太 @syu-ri-
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