フリーWiFiのモヤモヤ。
前回お話したが、私はファストフード店などで仕事をすることが多い。
しかし、私は自前でポケットWi-Fiなどを持っていないのだ。この高速通信当たり前の時代になんとも遅れた話ではあるが、それにはちゃんと理由がある。
最近はどこに行っても、必ずフリーWi-Fiがあるのだ。これが非常に助かる。ユーザー登録さえ済ませていれば、どこでもいつでも使えてしまうフリーWi-Fi。私はこれを命綱に、パソコンを持ち歩いてどこでも執筆をしているのだ。
ウイルスに感染したり、ハッキングされる可能性があるなんて話もあるが、そんなもんはお構いなしだ。書けりゃなんでもいい。
が、先日、そのフリーWi-Fiでこんな目にあった。
その日、私は猛烈に具合が悪かった。
頭痛と吐き気がひどく、できることなら家で寝ていたかった。
しかし、何としてでも今日中に決着をつけるべきサークル内の仕事があった。急遽グループ通話による遠隔会議が開かれることとなったのだ。しかも、そのあと知人と食事をする約束まで入れていた。まさに地獄のようなハードスケジュールだった。
普通の私だったら具合が悪いです、と言って絶対に休む。が、ここのサークルの主は仕事の鬼なのだ。こういう大切な日に音信不通になれば、間違いなく罵倒される。私はフラフラの体をなんとか揺り起こし、かかりつけの病院へ行った。薬をもらって気を紛らわし、大阪環状線で梅田に向かう。かろうじて一人掛けの席を確保することができ、私はほっとした。
JR大阪駅は鬼のように広い。そのくせして、どこにもフリーWi-Fiがない。正確に言えば、「ろくに使えるWi-Fiがどこにもない」のだ。
弱っちい電波ばかりで、接続できないわ、接続しても利用するための設定画面に行きつかないわで、かれこれ1時間近く広大なJRの駅の中をさまよい続けた。
そしてようやく!
一筋の光明が私に差した!
それは、スターバックスコーヒー!
スタバなら、どこの店にもWi-Fiがある!私自身、カクヨムの執筆をするときなどによくお世話になる店なのだ。これはしめた、この絶望的な局面を、切り抜けられるかもしれん。
さっそく一番安いアイスコーヒーのショートサイズを頼み、スタバ名物・一人掛けのやたら高いデスクセットに陣取った。これでようやく落ち着いて仕事にかかれる。私は意気揚々とパソコンを開いた。
ところが、だ。
Wi-Fiの設定をONにしても、いつものスターバックスのフリーWi-Fiにつながらない。何度試しても出てこないのだ。
まさか、という言葉が頭の中を駆け巡る。
私はそのまさかを確かめるためにWi-Fiの詳細ページを開いた。スターバックスフリーWi-Fiの電波の表示はどこにもなかった。
なぜかその店は、スタバWi-Fiが無かったのだ。
「チキショー―――!!!!Wi-Fiのねぇスタバなんてスタバじゃねぇ!!!!!」
俺は結局そのまま店を後にし、またうろうろしだした。悔しい。すっげー負けた気分。なんでこんな大都会で、誰でも使えるようなWi-Fiがどこにもないんだろう。ひょっとして神様が俺に「もう仕事をするな」と暗示しているのだろうか?
まさにWi-Fi難民。梅田をさまよう原住民のような気分である。重たいビジネスバッグを抱えながら、お腹の緩さを必死で耐えながら、死に体で歩き続けた。
結局、20分以上歩いた末に、ようやくWi-Fiのある別のスタバを見つけ、無事にクラウドを開き、グループ通話で仕事を完遂させたのである。
ひどい目に遭った。
尻はカチカチのベンチのせいで痛い。
頭は処理能力をとうに超え、激痛。
まさに生きる屍になりかけていた。
そのあと友人と食べた高級なうどんはとても美味しかった。優しい出汁が、ボロボロの俺の心までじっくり癒してくれたような、そんな気がしてならない。
もう辞めよう。
私はその時ようやく決心した。
なぜ命を削ってまでサークルにいなければいけないのか。体調が悪いなら、休む。こんな当たり前のことができない場所に、いる必要はなにもない。私はそう、心に言い聞かせた。辞めよう。そうしよう。
そうして、一緒に美味しいうどんを食べていた友人に、「いい店だね」なんて言いながら、フラフラの体に鞭を打って、いつも通り口の立つ爆笑トークを繰り広げて家に帰った。
・・・話が逸れた。
いつか安定した収入が得られるようになったら、ポケットWi-Fiを自分で契約して、いつでもどこでもカクヨムとかいろんなところに投稿できるようにしたい。自由気ままな文学生活を送るぞぉ、と、私は意気込んでいる。
余談だが、この原稿はミスタードーナツでエンゼルフレンチとストロベリーリングを食べながら、隣のローソンのフリーWi-Fiを拝借して書いている。
ふっふっふ。
私は映画泥棒ならぬ、電波泥棒。
今日もどこかのWi-Fiを、拝借拝借・・・。
ーつづくー
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