第30話 結婚式

「う~ん。もっと物語に感動を足したい。何かないかな?」

 望たちは、溜池山王駅から虎ノ門駅へ移動中の車内だった。

「誰か愛する人を殺せば? 最愛の人との別れは、悲しくて涙を流すくらい感動するわよ。私は、嫌よ。」

「僕に死ねというのか!?」

「でも、オチがあって、死んだと思ったら生きていたの。最愛の人との再会も嬉しくて感動するわよ。私は死ぬのは嫌よ。」

「はいはい、死ぬのは私です。」

「さらにオチがあって、再会したときに生きていた方は、最愛の相手が死んだと思っていたの、新しい恋人を作っちゃったの。」

「コラー!? この物語は、昼ドラか? それとも韓国ドラマか?」

「さらにさらにオチがあって、新しい恋人を捨てて、最愛の人々は愛し合うの。」

「それなら許そう。って、許せるかいー!?」

「さらにさらにさらにオチがあって、浮気を知った新しい恋人は、最愛の人々を殺しにかかるの!」

「ホラーにする気か!?」

「最愛の人々は殺されて、やっと二人は死後の世界で結ばれるのでした。」

「めでたし、めでたし。」

 やっとドロドロ昼ドラ劇場が終わる。

「希は、本当にそんな物語にしたいのか?」

「なんでそうなるのよー!? 自分の話じゃないわよ!」

 怒った希は、少し照れてモジモジして勇気を出して口を開く。

「私は普通に、望と大好きな電車の車内で結婚式があげたいな。」

 婚約者の希の夢は花嫁になることであった。

「今、さりげなく感動したかも。ああ、これが感動か。」

 望は、カワイイ無邪気な言葉に感動した。

「希! 電車で結婚式をしよう!」

「望がLAWSの社員になって、安定した生活が送れるようになったらね。」

 ラノベでも現実は厳しかった。厳しくなかったら、ハーレムばっかりになるのだろう。

「これで希が巨人に食われたら、駆逐したくなる気持ちがわかるわ。」

 感動と悲しみは、紙一重である。


「虎ノ門駅! 突破!」

 望たちは、さまよえる虎ノ門人レベル11を倒した。

「次の駅へいこう! 電車に乗ろう!」

「またね! 駅娘!」

「皆さんなら、きっと試験に合格できますよ!」

「ありがとうー!」

 望たちは駅娘に見送られて、黄色い電車に乗り、次の駅を目指すのだった。

 LAWS国家試験2次が開始して、9時間。残り10時間。現在は、午後2時。現在。6個目の虎ノ門駅を突破。残り13駅であった。

 つづく。

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