第2話

 あたしには好きな人がいた。

 こんなでかくて、髪も短くて、化粧なんかしたことないあたしも恋をしてたんだ。

 彼と、吉良君と初めて会ったのは中学の県選抜合宿だった。

 吉良君はいつも自信が滲む爽やかな笑顔をしていて、短髪がよく似合っている男の子だ。

 なんで選ばれたんだろうって不思議に思っていたレベルのあたしと違って、吉良君は選抜チームでも別格だった。

 サーブもスパイクもバンバン決めて、一人だけ違う競技をしてるみたいに上手かった。

 現にあたしがかすりさえしなかった日本代表にもなって、エースとして活躍していた。

 その時はただすごいなあって思うだけで、話すらしなかった。

 それよりあたしは練習についていくので必死で、がむしゃらだった。

 話をしたのは高校になってからだ。

 隣の県に住んでいた吉良君とは大きな大会や合同合宿なんかでちょくちょく顔を見るようになった。

 高一のある時。大会の合間にウォータークーラーから水を飲んでいたあたしに吉良君は話しかけてきた。

「なあ。もしかして中学の時会ったりしたっけ?」

 あたしは水を飲むのをやめ、首から掛けていたタオルで口を拭いた。

「うん。多分選抜の時。吉良君だよね」

「あ。知ってんだ。そっちは?」

「……大木」

 あたしは自分の苗字が好きじゃなかった。小学校の時から人一倍背が高かったあたしは、大きな大木として有名だったからだ。男子からは随分からかわれた。

「ふうん。大木か。覚えとこ。でも名前よりは大きくないよな」

 吉良君も他の男子同様に笑った。

 でもそれはあたしが大きいからじゃなくて、小さいからだった。

 あたし、百八十センチあるんだけど。

 あ。でも今は見上げてる。こんなのお父さん以外じゃ久しぶりかも。

 吉良君はあたしより更に大きかった。

 ドキドキした。

 だけどその理由は分からない。試合が終わって間がないからかなと思ったけど、このドキドキはそのドキドキとは違う気がした。

 そのあとは合宿の時の話や大会の話をして、彼とは別れた。

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