感受性倦怠期の客船

 皺腹の慈母。青嵐の借款、停滞した賢人の叡智、犇めき合う脳髄に垂れ下がる、降水確率の余波。何もかも嘘ばかりのあなたの笑顔に恋したう。


 明日、フラれる絆で染みた、水玉模様の手拭いを深深と縦に引き裂いて二枚にする。出来合いの惣菜みたいな誰でもおいしい思い出と希望を、安上がりな知識で置く、百均のタオルとハサミで未来をも丸呑みにする蛟になりたかった。


(或る高みにある餌の取り方)

 つる下げたバナナに土台を置いて猿のように忠実に準える 進化の過程にて。キリンの髭だけを門扉に結び付ける、本当は出来損ないのシニガミですら、湿った折り紙で綺麗に作り込まれた立体交尾の絵本でなきゃ生き続けられない、

 隅に侵され売れ残りの水蜜桃はもはや腐っていて。そんな誰の記憶にも残らない人生で結ばれたい。綺麗なおべべで飾り立てる、十二戒の雛飾りの上段に、嘘でもいいから、私とあなたを薬包に仕立て、らくにあげたいのです。


 格子に治まる長月。落書きされたガラクタの子供達に告げ口する、青い鳥の骸が解けて流れた先に、夏の名残のまま種を残した花火が身も心も残腹に破裂した。二重露光の虹彩とモノクロの吐瀉を焼き増しする、未来を育むことのなかった愛しいものたちの、花暦のかたち。埋め尽くす涙と五月雨から飛来する、灰のような雪にトチ狂った無限大の軌跡を抱いていた、あれは赤子の、渡し。


 感受性倦怠期の客船に乗り込んで、今にも沈みそうな。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る