詼(タワムレ

 誰かが亡くなったのだろうか、教会の鐘が鳴り響いていた。

 その何かを喰らう黒い鴉があなたの肩に止まった時に、ガタガタガタガタと鳴る黒い穀潰しの木々にぶら下がる嘗ての遺体が、果たして誰のものだったかなんて、指摘する者ももう既にいないというのに。

 

 闇はやさしく、全てを覆い隠して朝になれば燃ゆるほどの空が全てを赤く染めて杯に返してくれるのだろう。飲み干してしまいればいいのに。灰だけがお道化るばかり。

 さようなら愛おしい私の御神体。


 この博物館は私が産み落としたもので満たされている。

 訪問者は誰もいないが過去を売り払い合えばいくらでも命は排出されて、特に記憶を束ねる針金虫などは血肉も含め、何もかも無くしてくれるのでさして問題はない。その小さきものを含んだ生殖器には特に感謝せねばいけない。


 声の限り叫び私の体を散り散りにさせ、それを吸ったり吐いたりするなどとしたけぶりのように、もうもうと空いた視界は零れ吐かれたのは、

 小さな頃よく歌った童歌。真ん中に折ることに躊躇ない千羽の鶴の呪いであって被われるこれは、私が過去に書いた妄想であるが、それもまた繰り返される輪廻に見せられた妄執の余波。

 即ち黄金に入滅する海の和らぎゆく漣にも似ていて、その眼力に引き寄せられた私がここに産み落としたものが半裸に到る、死した人魚のミイラである。


 まだあどけない赤子の体を保ち私を誑かし幾度も取り上げさせるものである、はんぶんのひと。やっと轡の中に神を見つけた。

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