亊刄杳窕

詞梳記(ことばとき)

第1話 連理の枝 比翼の鳥

 そろそろと白々しく全てを見下すよう大粒の雨を用て、私たちの穢れた血を洗い流す。

 したところで何の意味も持たず、とうとうと華咲き続く道は白き靄に慕われ、先行きは屹度永久の不透明であることは分かっていた。

 

 二度と話すことはないだろうと

    口を噤んでいたのだ。

 二度と離すことはないであろうと

    結われたは腕(かいな)

 

 幸せであったのだ。折れた翼であっても、

 もう抱くこともままならず

 擦れ違うばかりでも

 

 それでも、

 もう動かぬ躯と成り果てても、肌を添わせるのだろう。

 

「いっしょにいこうね」

 

 約束はさらさらに、風に散る

 もう彼方の声も顔も香りすらもよくわからない

 遠くと奥へ這炒り混んだ、ひとつの奏上の乞い詩

 

 時は無情にも全てをなくす、さらさらと移し出される聲

 徒花は枯れ果てても、〆んとばかりに急ぎ手廻る

 天情野色

 彼はおやすみと微笑むように、私がおはようと囀ります。

 

 新しい朝日が顔を出すだろう

 湖山の月夜が今宵も又

 満ちては欠ける、ひとしづくの光に

 突き抜ける風に、ヒノヒカリは知っている。

 

 ことばココに有り。

 

 この場所にいつまでも残るは音色の証明

 照らされる翳の記憶 展の滲(し)み

 

 なぃてゐるは何方とも無く

 連理の枝 比翼の鳥

 ともに

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