第13話 sideステラ
ルンルンルンルン~♪ ルンルンルンルン~♪
晴れやかな気持ちでスキップをするステラは朝からご機嫌なの!
どうしてステラがこんなにも浮かれているのかって? ふふーん♪
そんなのは簡単なこと♡
遂に完璧な恋人を見つけることができたから。
そう、あれは運命的な出会い!
と、言っても昨日のことなのだけどね。
男爵家で生まれ育ったステラには、夢があるの。
それは幼い頃にお母様によく読んでもらった一冊の絵本。
【星空の王子と羊飼い】
この絵本に登場する羊飼いの少女はとても貧しくて、可哀想な子なのよ。
だけど、そんな羊飼いの少女にお星様のような煌めく髪の王子様が、恋に落ちるの。
身分差があって王子様の周りは羊飼いの少女との婚約に大反対!
でも、優しいくてイケメンでお金持ちの王子様は、周囲の反対を押し切り、彼女と結婚して、いつまでも幸せに暮らすの。
素敵でしょ? うん、とっても素敵なお話しよ。
ステラはこのお話しが大好きで、いつか星空の王子様のような人と結婚するって決めている。
お父様もお母様も男爵家の娘が王子様と結婚なんてできる訳ないだろと言うけど、そんなことはないの。
絶対にないわ! あったら困るものッ!!
そこでステラは、どうすれば王子様とお近づきになれるか考えた。
もちろん、たまに王宮内で開かれる舞踏会にも足を運び、積極的に王子様達とお話ししようと試みた。
だけど、結果はダメ。
男爵家で家柄がそこまで良くないステラが王子様に近づこうとすると、すぐに嫌がらせをする悪役令嬢がいた。
そのせいで15年間、一度も王子様とお話ししたことがないの。
悔しぃぃいいいいい……ってなるでしょ?
だからステラは王子様の情報を買ったの。
王宮内に勤める侍女の方にお礼を握らせて、何でもいいから情報を毎月買っていた。
そしたら……ビンゴッ!
ステラの努力が神様に届いたの!
なんと、リグテリア帝国で最も次期皇帝に近いと言われる第三王子、ジュノス・ハードナー王子様が、王立アルカバス魔法学院に通われると言うじゃない!
チャーーーンスッ!
てな具合で、ステラも急遽王立アルカバス魔法学院に通うことを深く決意。いえ、断固決意!!
しかも、このジュノス・ハードナー王子様は……なんとびっくり!?
星空の王子様と同じ白銀の髪の持ち主なの。
ステラは確信したわ。これはまさに運命!
ステラはジュノス王子様と結婚するために生まれてきたの。
そして、運命の昨日。
新入生代表の演説を堂々とするジュノス王子様をこの目で捉えた。
ターゲットロックオン、なんちゃって♪
だけど、もっとびっくりしたのは演説の内容。
ジュノス王子様は大勢の人の前で、
まぁ、多少脚色してしまったけど、全体の流れとしてはそんな感じだったと思う。
何より、ジュノス王子様は壇上からずっと私を見つめていた。
まっ、実際には二、三度目が合ったかな~? くらいなんだけど、そんな細かいことはどうでもいいじゃない。
ステラはお家に帰ってすぐにお手紙を書いた。
もちろん、恋人のジュノス王子様への恋文。
書き終えてから早着替えの如く勢いでドレスに着替え、門の前で待ち続けた。
ん……? 何を待ってるのって?
決まってるじゃない!
ジュノス王子様が舞踏会のお相手にステラを誘いに来るのを、よっ!
誘われてないから来る訳ないって思うでしょ?
ご心配なく、庭先からジュノス王子様のお屋敷に念力を送り続けているから。
テレパシーって強力なのよ。知ってた?
これで絶対にジュノス王子様は気づくはず。だって運命の恋人だもの。
気づかない方がどうかしてる。
一時間……二時間………三時間過ぎた辺りから、共にポースターへやって来たお母様がいい加減になさいと喚き始める。
みっともないから家に入りなさいと。
そんなことできる訳ないじゃない!
万が一ジュノス王子様がステラのお家を見つけられなかったら……ステラを目印にたどり着けなくなってしまう。
それはダメ。
さらに一時間……二時間………三時間経った頃には、お母様が泣き初めた。執事のセバスチャンがお願いだからお止め下さいと懇願してくる。
さすがに仕方ないと家に入って待ったけど、一向にジュノス王子様はやって来ない。
やはり、庭先に立って居なかったからステラを見つけられなかったのだと思い。
慌ててセバスチャンに馬車を用意させて会場へと向かった。
会場に着くと舞踏会はとっくに始まっていて、その中にジュノス王子様を発見した。
王子様は見るからに傲慢そうな女性と何かを話している。
って、あの
それに、似たような見た目の小さいのまでいるわ。
あの小さい子は何なのかしら?
とにかく、ステラも王子様の元に行かなくてはっ。
と、歩き出したら、王子様の方からこちらに向かって来てくれる。
キャーーーーッ!
ステラ大興奮!!
してたら、王子様とぶつかってしまった。
「あっ、ごめんなさい!」
すぐに呼び止めようとしたけど、子供がジュノス王子様を連れて行く。
このままでは不味いと思い、咄嗟に王子様のポケットに手紙を押し込んでしまった。
ダンスが終わるまで待とうとしたのだが、なぜかクラクラ目が回る。
ぐぅ~~~~~。
と、あり得ない音が鳴る。
あっ、朝から何も食べていないことに気がついた。
会場の端の方にビュッフェがあるけれど、食べてる者など皆無。
さすがに食べる訳にはいかない。
だけど……空腹と貧血で倒れそう。
このままでは死んでしまうかもしれない。
凄く残念だったけど、お腹の音を王子様に聞かれる訳にもいかず、そのまま会場を後にしたわ。
ステラ……一生の不覚。
けど、ちゃんと手紙は渡せたし、明日には学園で会いましょうと書いてある。
焦る必要はない。
そして、現在。
ステラはとても幸せな気分で廊下をスキップする。
朝食もしっかり採ったからお腹が鳴る心配もない。貧血でぐったりということもない。
まさに完璧!
キョロキョロと廊下を見渡し、各教室を覗いていく。
もちろん、ジュノス王子様を見つけるため。
「あっ!?」
見つけた!
王子様もキョロキョロと落ち着きなく首を振っている。
その光景を見て、ステラは天にも昇る思いで胸が満たされていく。
だって、間違いなく王子様はステラを探している。
あんなに必死に首を振ってステラだけを見つけ出そうとしてくれているの。
愛しいと思ってしまうのは当然。
当然の乙女心なのよ。
今、会いに行くわ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。