紫紺の術者が笑ったら
リト
第1話
「僕は!強くて優しい兄さんみたいな
キラキラした群青色の目で目と同じ色の髪揺らしながら夢を語るのは、名をトライ・アーキット。アーキット家の次男にあたる。顔は整っており中性的な顔立ちは女児と間違えられる事もある。
「なれるよトライなら、夢は口にすれば叶うんだ俺くらいなら直ぐに追い越せるさ」
微笑み返すのは、ツヴァイ・アーキット茶髪の髪で、目は青色だ。こちらも容姿は整っている青年で、トライの兄である。
「、、ちょっと、やめてよ兄さん」
ヨシヨシと優しく頭を撫でられ、片目を瞑り逃げようとするが邪険に払ったりはしない。
夕日のに照らされる二つの影が暖かな会話をしながら彼らの住む村への道を歩いて行く。
村の入り口近くで筋肉質な男が叫んだ。
「ツヴァイ!トライ!帰ったか!」
この男の名はアウレス・アーキット。
兄弟の父だ、茶髪に茶色の目は体も相まって熊のようだ。
「ただいま父さん」「ただいま!」
「よく戻った。母さんが飯を作って待ってる、怒らせたら怖いぞ母さんは、すぐ帰るぞ!」
「うん!」
何かを思い出したかのようにブルっと震えながら青い顔のアレウスが笑った。
家に着き、家族四人で食卓を囲む。
使い古された木製の机にのる料理に頬膨らませ夢中で食べる。
「トライ。そんなに急いで食べなくてもいいじゃない。誰もとらないから ね?」
問いかける女性は彼らの母 リルイ・アーキット金髪碧眼の美人で、二十代かと勘違いしてしまうが、二児の母。歳を頑なに言わず家族で知っているのは父だけだ。
「かあさん!今日は早く寝なくちゃいけないんだ!明日兄さんが魔法を教えてくれるって言ってたんだ!」
飲み込んでから喋りなさいと叱られるが、それどころではない。初めて明日魔法の行使を教えて貰える、日々悶々とどうすればいいのか考えたが一向にできる気配がしなかった魔法を明日出来る。
寝れば明日はすぐ来る!早く寝なければと思ってしまう。
心のどこかでは寝ても早く時間が経つことはないと分かっていても楽しみで仕方がないのだ。
「ツヴァイ順番通りに教えてあげるんだぞ剣でも魔法でも大事なのは基礎だ」
「まあ、あなたが監督なら安心ね」
こんな会話をしているが、両親が魔法を使えないと言うことはない。リルイに関しては洗濯から掃除、料理までも所々で魔法を使っている。
だって楽なんだもの。がリルイの言葉だ。
俺が教える意味は分かっているとも。
明日はトライの十歳の誕生日なのだから。
朝になり、兄と共に家の庭に出る。
クマのある充血した青い目を見開きながら見るのは兄の魔法だ。
「まずは見てもらうかな、「ライト」うん、これが光の魔法だよ」
ツヴァイの右の掌の上に光の玉が浮かぶ。フワフワと浮いているので柔らかそうだなと変な感想が出てくる。そしてこんな魔法が僕にも出来るのかとワクワクする。
「じゃあトライ、まずは魔法の仕組みを知ってるか?」
首を横に振り否の意を示す。
「そうだよね、危ないから十歳までは教えて貰えないものだから普通は」
理由は体の負担ももちろんあるが、幼い頃から魔法を使えれば周りに被害が出てしまう事があるからだ。
例えば子供の癇癪で火の魔法を室内で使えば木造の家などはすぐに引火してしまう。
上に向かって水の魔法を使えば溺れかけるなど他にも様々だが、、だから魔法は10歳を超えてからというのが暗黙の了解である。
でも勿論例外はある、それが貴族達だ。見栄っ張りな彼らは我が子がより先に練習を重ね差をつける為などの理由で既に家庭教師を雇い教えている場合がある。
「魔法は体内や空気中、そして精霊の魔素をエネルギーに変えて現象を起こす事全般が魔法。そこから分岐して、属性魔法の火、光、闇、風、空、土、気、水があるんだ。ん?
なんで水最後なのかって?水は少し特殊なのさ、これだけは生み出す魔法だから。まあ空の魔法でも水を作る事は出来るんだけど、空の魔法のメカニズムは大気の温度を急低下して空気中の水分を、、、まあそりゃ分からないよね、まあいいや、とりあえずこの八つが基本さ。魔法を使える人はこの中で素養のある属性の魔法を行使出来るんだ。基本一つなんだけれど、たまに二つ使える人が
僕はこれ、光と風の
そうして木のケースから取り出すのは八色の小指の爪のような宝石だった。
「これは魔石。魔物の体内から取れる石だよ。前に手を出して、ちょっと痛いけど我慢してね?」
言われた通り前に手を出すと兄が指の先に針を刺した。
「ッイツ」
「ごめんね、トライ。調べるために必要なんだ。痛いだろうけどその指で魔石を全部触ってごらん?」
言われるがまま血を石に付けていく。触り終えた頃にはぼんやり光始めた。光っていたのは白濁色の石と黄色い石だった。
「すごいよ!トライも
顎に手を当てながらブツブツと独り言を呟き、思案げな表情をしている。
「僕の属性は空と気かぁ。なんかもっと派手なのが良かったけれど、、やっと使えるんだ!兄さん早く使い方を教えてよ!」
ハッと我に返ってまた考え始める。
「よし!始めようか!自然体でいてね」
握手をすると手から生温い何かが腕の中を登って来る。気持ち悪い。
あっという間に心臓の近くまで来て、突然ゾゾゾゾゾッと内側から溢れ出す。
バッ顔を上げ兄の顔を見ると何故か苦しい顔で汗を流している。目が合うと苦笑いをした。
あれ?なんかこれまずいんじゃ、、、、
全身に濃い
焦げ臭い煙が上がりだんだんと溢れ出ていたものは収まっていく、そしてしばらくして止まった。
猛烈な不快感と目眩で脱力し、芝の上に倒れ伏す。
消えかかる薄っすらとした視界の中で、兄さんが脚を抱えて
何故か確信のようなものがあった。
「、、、にい、さん、、、」
さっきの光で真っ黒になった手は届かずそのまま意識は沈んでいった。
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