少年と少女の未来編-ありがとう-

ドーナツパンダ

第一話「二人の幸せ。祝福の言葉」

「お嬢さんと結婚させてください」

キリとした目つきに顔立ち。そして何よりこの痛い視線を感じる隼人と穂香。

「なぜだ?」

「お嬢さんとの結婚を意識したのは、和誠さんとのお付き合いを存じた時でした。

そして、徐々にお付き合いをする日々が連れ、この子となら生涯のパートナーになれると思い、こうして政夫さんと咲さんにお会いすることを決めました」

「和誠さんの事で、穂香はずっと悲しんでたの。病気になるまで…ね」

「その事は存じてます」

「分かった。結婚を認めよう」

「ありがとうございます」

二人はペコリと深くお辞儀をした。


「どうしたの?」

少し落ち込んでる穂香の様子を見た隼人はそっと肩を自分に寄せた。

「ううん、実は…」


11年前の10月某日

『穂香』

『なに?和誠さん』

『もし俺が亡くなって、他の男を好きになったら報告して欲しい』

『…!そんな!』

『愛してるよ。例え…君が他の男に惚れたとしても、俺はいつまでも君のことを愛してるよ』

『うん、ありがとう。和誠さん』


「そうなんだ。だから落ち込んでるんだね」

「うん、ごめんね」

その後、隼人と穂香は日原家の墓参りに行った。

「和誠さん、ごめんね。今度隼人さんと結婚することになったよ」

「そうか…」

「…!!和誠さん?」

「穂香、迎えに来たよ」

スッとした顔立ちに優しい声。

あの時とは少し変わったけど、優しい笑顔だった。

「遅くなってごめん」

「ううん、大丈夫」

「今世の名前は『日原和誠(ひはら

かずなり)ではなく、『佐藤賢(さとう まさる)だ』」

「そうなんだ」

「賢さん」

「なんだ?」

「藤崎隼人さん、私の旦那さんになる人です」

「知ってる」


「さっきの聞こえたよ。二人ともおめでとう」

「ありがとう」


「和誠だった時は、本当にすまなかった。許してくれ」

賢はペコリと深くお辞儀をした。

「…ラブレターはまだ残してますよ」

「そうか。ありがとな」

どこか優しく微笑む賢は、穂香の横にいてぴったりだった。

「今、何歳ですか?」

「ちょうど20歳だ」

「じゃあ、私より8歳年下ですね」

「そうだな」

「賢さんは、まだ前世の記憶はあるんですか?」

「残ってる。ちゃんと…」

「賢さん、私に言ったこと覚えてますか?」

「覚えてるよ」

「『ごめんな、穂香。いつまでも愛してるよ。…忘れるなよ?』」

「…覚えてるんですね」

ポロッポロッとまた涙が溢れ出した。

「幸せになれよ?俺はずっと君の幸せを願ってるよ。だから、俺のためにも幸せになってくれ」

「はい!」

賢は、穂香のおでこに優しくキスをした。

(優しくて切ない恋をした二人だから、再会できてそりゃ嬉しいよな)

「おめでとう。結婚式の招待してくれよ」

「もちろんです」

「もちろんだ」

優しく微笑んだ穂香の横で、隼人はどこか安心した。

(これで、君はもう幸せになれるよな)

「良かったな、穂香」

「うん、そうだね」


和誠の今世・賢と穂香と隼人は夕焼けを見つめた。

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