詩と血




切った指先

溢れ出る血液

固まる前に

真っ白な紙に

言葉を落とす


切れた傷口

流れ出る血が瘡蓋で

堰き止められる前に

真っ白な紙に

言葉を植える



植えられた言葉は

鮮やかなまま

熱を帯びたまま

紙の中で凍結され

古びることを忘れた

生きた詩となるだろう


たとえ僕が死んだとしても

この詩は生き続けるのだろう

僕のことなど忘れて

古びることも忘れて

生き続けるのだろう




僕を忘れて生きていく

そんな詩を

そんな言葉を

刻み続けていきたい



そしていつの日か

僕を忘れた詩や言葉が

生き続けるこの土に還って

眠り続けて




すべて忘れ去られた

雨滲む月夜の中でやっと

僕は言葉になれる



僕の死はいつか

僕の詩そのものになれる




その為ならば

ナイフを握るなど

生きるに等しいことだ



指先から滴る血で

詩を綴る

この狂気じみた行為さえ

ただ

ただ


生きるに等しい














  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る