灰白の影





吐いた息が白い





冬の海はこの世界の真実を

誰よりも知った風な顔をして



雨に濡れて飛ぶカラスと

歩くことを諦めた者の影は

どちらも漆黒



凍てつく海風に

乱雑に髪は靡かされ

枯渇した心が

カラスの濡れた羽さえも羨み

背に伸びる影はより一層深く



漆黒を纏った渇望は

いずれは全てを奪うのだろう

暗黒で蠢く欲望は

いずれは命さえも奪うのだろう



そんなものに成り果てるくらいなら

もういっそのこと

凍てつくこの冬の海へ

身を投げてやるよ

投げやりに吐き捨てた言葉は白く



そんなことしたって

世界は何も変わりやしない、と

呆れた顔をした冬の海が

溜息まじりの風を吐き



凍える身体を震わせて

それでも寒さは耐え難い、と

独り言を吐き捨てながら

諦めたはずの道に揺れる影は灰白











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