人よ人世の怪奇譚~俺と花と月下蝶~

日向月

第一宵 すべての元凶でもあり序章でもある

ーーガタンゴトン

ーーガタンゴトン


その音で少女は目を覚ました。

さっきまで閉じていた目を擦り、周りを見渡す。

電車の中のようで高級に誂えられた銅色を貴重とした其処に顔色の悪そうな性別がバラバラの男女が座っていた。


「ここは何処ですか?」


その内の後ろの席に座っていた女性に声をかける。

女性は顔をゆっくり上げ、少女と目を合わせたあと、消え入りそうな声で一言、


「ニゲラレナイ」


と言った。












「ねえ聞いた、また起こったらしいよ?」

「えぇ、嘘ぉ。何時になったら終わるんだろうね。」

「次はあんたかもね!」

「一寸、やめてよー。」


さっきからあちこちでこの話が話題になっている。

噂はこうだ。

夜の内に失踪した人が次々と変死していく。

それも妙らしく、殺し方はバラバラなのだがそれはどれも気持ち悪いほど綺麗に整えられたベットの上で発見されるとの事。

警察は連続誘拐殺人事件と見て、捜査してるとネットやニュース、新聞などでも報道されていた。

先生からもSHRで注意換気がなされていた。

俺しか覚えていないあの事件から4カ月が過ぎ去り、あの事件の事は記憶の奥深くに眠っている。

まあ、思い出そうと思えばいつでも思い出して詳細に語ることは出来るが。

如月さんとはあれ以来会えてない。

いや、語弊があったかな。

会う勇気がまだ無いのだ。

仕事の時は冷静沈着、静寂閑雅、極性恬淡だが、一歩仕事から離れると意気衝天、温和篤厚、天真爛漫と言った所だ。

そんな二面性がある彼女と面と向かって、今までの疑問をぶつけたいのだが・・・

どうすればいいかをうんうん悩んでいると、横から話しかけられそこの考えを一旦置き、振り替える。

クラスメイトのとある少女だった。

黒髪を下の方に一つに結い上げ、少しジト目の彼女はオズオズと俺の方をじっと見ていた。

手を前で遊ばせ、必死に言葉を振りだそうと悩む彼女に俺は痺れを切らし問いかける。


「どうしたの?俺、何かした?」


そう言うと全力で首を横に振る。

益々その子の言いたいことが分からなくなり必死に話題を振っていく。


先生が呼んでた?

違う。

何か聞きたい事があるの?

少し迷って、少し違うと言う。

じゃあ、何か落としたのを拾ってくれた?

違う。


なんだよ。

そう思いながら、次の質問を問いかける。


「もしかして、困り事でもあった?」


何度目か繰り返した末に導き出した質問に少女はパッと顔にかかった雲を一瞬にして取り払い、首がもげるかと思うほど縦に振る。

正解だったらしい。

取り合えず、誰もいない場所に行こうかと言って、手をとった。


















「それで、どうしたの?」

「その・・・今から言う事信じて、下さいますか?」

「・・・うん。」


そう頷いては見たものの見当がつかない。

この物言いだとオカルト的要素がありそうだが・・・

まあ信じてあげることは出来るので、まあ、間違ってはいない。

そう思考を巡らしていくうちに彼女は口を開いた。


「あの、私・・・私、あの、ゆ、誘拐されるかも知れなくって。」

「え?」


何で?と聞きたくなった。

何で誘拐されるってわかるの、って。

予言が出来るんだったらまだしもその子に能力なんて無さそうだ。

一体どう言うことだ?

その感じを読み取ったのか、将亦、顔に出ていたのか弁解をする。


「あの、無理に信じてもらわなくとも大丈夫です。でも、少しだけ、聞いてくださいませんか?」


辿々しく話すその姿は嘗て、詰貝先生に少し焦点がずれた推理ショーをした嘗ての俺を思い出させる。

その子が語り出した途端、風景はガラリと姿を変えた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る