『 世渡り』
日向月
「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」
「うつし世はゆめ 夜の夢こそまこと」
--江戸川乱歩(https://serai.jp/から引用)
何かに押される感覚がして目が覚める。
半透明のレースのカーテンが風に乗って空に揺蕩っていた。
黒板は一面若草色に。
机や椅子は鉄パイプ銀色が一層輝いて、木は木目模様の小麦色が少し明るさを帯びている。
蝉は騒がしい。
だが、その季節特有の粘りを含んだ暑さは感じない。
夢、か。
単色の机を撫でて見る。
多少の暖かさは感じる。
だが
「芹。」
いつの間にか隣の席の友達が座っていた。
「やっほ。」
「一華、どうしたの?」
「別に、ただの暇潰し。芹と話したかっただけ。そう言えば芹、最近寝てばっかじゃない。いい加減起きなよ、怒られるよ?」
「無理かなー。だって眠いもん。」
「駄目だよ、起きなきゃ。もう十分寝てるでしょ。」
「そうなのかなー、急に眠くなるしまだ足りないんじゃない?」
冗談混じりでそう言うと、苦笑してちゃんと起きなさい。って言われる。
教室にかけられてる掛け時計を見て、もう行かなきゃ。と立ち上がった。
「もう行っちゃうの?」
「うん、ごめんね。用事があるからさ。」
「そっか、じゃあ仕方ないね。またね。」
「またね、ぜ____」
暗闇。
状態を起こすと、そこは自分の部屋だった。
生暖かい空気が半開にした窓から流れ込んでくる。
あれ、寝てた?
下に引いていた問題用紙は無事なようだが書きかけで文字の途中でミミズが這っている。
机の明かりを消し、夜空を見る。
空は藍色、十円玉位の満月と青白い光の欠片が散らばっている。
天の川の一部は山の頂上へ流れ込んでいた。
幸いにも、街の明かりは少なく、夜空を見るにはうってつけであった。
宿題を一つに纏め、ベットに飛び込む。
まだ眠気が残っているようですぐ瞼が落ちた。
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