親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出して冒険者をします。
ふるか162号
第1話 親友が酷い目に遭いそうなので二人で逃げ出します。
私はレティシア、名前も知らない町の町外れの森で一人で暮らしています。
見た目が小さく十歳くらいに見られてしまいますが、こう見えて十六歳です。
何故、そんな私がこんな町外れの森で一人で暮らしているかと言うと、町の人間から忌み嫌われているからです。
私のお母さんは
とはいえ、別にどう呼ばれようとも気にもしないのですが、食料を売ってもらえない事だけは困ってしまいます。
住む所は、町外れに勝手に作りましたし、衣服に関しても
しかし、食料だけは買うしかなく、私は魔物を狩ってお金を稼ごうとしました。
お金は冒険者ギルドに行けば魔物の素材を買い取ってくれるので手に入りましたが、町の人間がお店をしている以上、買い物は出来ません。
確かにお肉は魔物のお肉を食べればいいですが、それだけでは体に良くないので野菜を食べたかったのですが、売ってもらえないので森で木の実や野草を食べて凌ぎました。
出来るだけ町の人間とは接触を避けているのですが、冒険者ギルドに魔物の素材を売りに行くときにどうしても町の人間に会ってしまいます。その時には石を投げつけられます。
知ってましたか?
石というのは当たると痛いんですよ。
だから石を避けて、投げ返したりもします。
だって、当たってはいませんが、私だけ痛いのは嫌じゃないですか。あ、殺しはしませんよ。
人間は人間を殺すと憲兵隊とやらに捕まってしまうので厄介です。
とはいえ、私も人間を殺した事はあります。
いけない事とは知っているつもりはしていますが、自分の身に危険が迫れば殺してもいいと判断しています。もし、綺麗事だけ言って自分が死んでいては意味がありませんからね。
こんな性格だからか、私にはお友達はいません。
だけど、親友がいますので寂しくありません。
親友の名前はエレンといい、この町の領主様の娘さんです。
彼女はこんな私にも優しくしてくれる素晴らしい女の子です。
あ、エレンのご両親も私に気を使ってくれますが、町の人間に強く言われて大っぴらには助けられないと言っていました。
私としてはたまにくれる野菜などで充分なのですが……。
コンコン。
誰か来たみたいです。
まぁ、この家に来るのはエレンくらいだと思いますが……。
私が玄関の扉を開けると、エレンが浮かない顔で立っていました。
アレ?
いつもは執事さんと一緒に来ていたのに、今日は一人?
「エレン、どうかしましたか? あ、入ってください」
いつも笑顔のエレンは今日は沈んだ顔をしています。もしかして、誰かに何かをされたのですか?
「エレン?」
「レティ、私……どうしたら……」
エレンはぽつぽつと話し始めます。
どうやら、この町に勇者というのが来るそうです。
勇者というのは良く分かりませんが、魔王を倒すがどうとか言っていた記憶はあります。
どっちにしても、勇者というのは権力を持っているらしく、それで、教会の神官長が勇者に取り入る為にこの町一番の美人さんであるエレンを貢ごうとしたそうです。
流石に領主でもあるエレンの両親がこれに反発したそうなのですが、町の人間もエレンを差し出す事を望んでいると思っているそうです。
親として、娘を差し出せと言われて素直に差し出さないのは、当たり前と言えば当たり前なのですが、町の人間達は勇者に取り入る方が大事と考えているみたいで、エレンがどうなろうと構わないと、エレンの両親に迫っているそうです。
で、そんな怒号を聞きながら、部屋で一人で震えていたら、執事のお爺さんが屋敷から逃がしてくれたそうです。
私はその話を聞いて考えました。
一番の解決方法は、町の人間を皆殺しする事なのですが、それだという憲兵とやらに捕まってしまいます。もしかしたら、原因となったエレン達家族にも処罰が下るかもしれません。
それも困るので、とりあえずエレンをこの家に匿います。そしてエレンのご両親に相談してみましょう。
もしもの時はエレンのご家族は逃がさないといけません。
私はエレンにここに隠れているように言い、領主様のお屋敷へと向かいます。
「ん? 今は夜なのになぜ空が赤いのでしょうか?」
何か嫌な予感がします。
私は、領主様の家を見下ろせる場所へで何が起こっているのかを確認します。
そこには、三人の男女が磔にされて、屋敷が燃え上がっていました。
何があったのですか?
磔にされている人達は生きているのですか?
私は目を凝らします。
……ダメです。
心臓付近に剣が刺さっています。
惨いです。
教会というのは、人々の幸せがどうこうと聞きました。
しかし、あの惨状を作り上げたのが教会の神官長だというのが信じられないです。
ハッ!!
エレンの身を案じ急いで家へと帰ります。
大丈夫と分かっていても焦ってしまいます。
家に帰ると家が大きく燃え上がっていました。
おそらく、エレンが逃げ込みそうな場所を探したのでしょう。で、誰もいなくて燃やしたという事でしょう。
しかし、エレンは無事です。
私は嫌われていたので、いつ襲われても良いように
エレンが隠れているのも地下です。
私は、水魔法で炎を消します。
すると、森から怪しい連中が出て来ました。
「貴方達ですか、人の家を燃やしたのは……」
「げへへ、領主の娘を出しな。今なら殺しはしないぜ。ただ、楽しませてもらうがな」
「ぎゃはは!! お前ロリコンかよ!!」
怪しい連中は笑っていますが、こんなのに構ってはいられません。
そもそも、人殺しは良くないと言っていたのは教会の連中です。
エレンのご両親と執事さんを殺したのは町の人間です。その直接的原因を作ったのは教会の神官長です。
そうです……。
こいつ等を殺しても問題は無いはずです。
私は、怪しい連中に懐に入れてあった投げナイフを首を狙って投げつけます。
首に刺されば人は死にますし、もし投げそこなったとしても掠れば、あの場所は血が沢山出て死にます。どっちにしても殺せるのでいいでしょう。
怪しい連中を殺した後、私は地下への扉を開けます。
中はひんやりしています。上で家が燃えてもここまでは熱は来ないでしょう。
「エレン……」
「レティ!! 上で何かあったの!?」
「はい……落ち着いて聞いて下さい」
私は領主の館で何があったのかをエレンに説明します。
心苦しいですが、このままこの町にいてもエレンが危険な事には変わりありません。
一刻も早くこの町を出たいのですが……。
エレンは私の話を聞いて泣いています。
……当然です。
私もお母さんが
そして、お母さんを殺した町を滅ぼしましたが、残ったのは虚しさだけでした。
エレンも今その気持ちでしょう。
……でも……。
「エレン、このままこの場にいても危険です。この町を出ましょう」
「で、でも……どこへ?」
「分かりません。どこかで静かに暮らしていきましょう……」
私達は、外の怪しい奴等の持ち物を物色します。
エレンはお金持ちでしたけど、今はお金を持っていません。
私は魔物の素材を売っていたとはいえ、買い叩かれていたのでそれ程お金を持っていません。別の町に行くのであればお金は必要です。
とはいえ、領主の館に戻るのは危険なので、こいつ等から貰っておきます。すでに死んでいるから必要ないでしょう。
怪しい連中はたいしたお金を持っていませんでしたが、とりあえず何とかなるでしょう。
私達は旅の支度をして、町を出ました。
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