この想いを

雨水

虚しさ

「好きよ、好き。大好き。愛してる...。」


泣きながら私は呟く。

雨がまわりの音を消して、この世界に私しか居ないように感じられる。


「愛してる、心の底から...。」


なんの飾り気もない言葉しか吐けない自分が嫌になる。


「...愛していたのよ。本当に。」


もう過去形になってしまった。もう直接伝えることはできないから。


「...もっと、一緒にいたかった。」


もうその姿を目に写すことさえ叶わないけれど。

私の中のあなたが消えてしまいそうで酷く怖い。


「言えなくて、ごめんなさい。」


一度も伝えることは出来なかった。私が意気地無しだったから。


「...っもう一度っ会いたい...!」


また涙が出てきてしまった。私が彼に会う資格は無いのに。


呼吸を落ち着け、目を閉じる。


「...どうかあなたが、幸せでありますように。」


祈る。



彼のお墓の前で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る