書けない秘密

「きゃーー♡ 」

また、黄色い歓声が聞こえる

歓声の相手は空井冬馬そらいとうま宛かな?

女子達に格好良い男子って誰?と聞くといつも、真っ先に名が上がる冬馬という男は果たして本当に格好良いのだろうか?否、否である!所詮、外見が良くても中身の悪い、どんな時でも自分を最優先しているワガママなクソガキだと俺は思う

以下略




「こんなのが認められる訳ないだろ!書き直しだ!ってか空井冬馬って誰だよ!!!全く!」

怒られた、唐突だが俺は天義頓馬あまぎとんま高校2年生だ

将来何したいかも決まっておらず、友達とアホなことして笑ってるいわゆるリア充って奴だ

そして目の前にいるのは編集担当の峯山さん

ザ·クールビューティなお姉さんなのだが

趣味で書いた小説がたまたま目に止まって書籍化したら売れると思ったらしい

それで書いたらこの言われよう

どうしてだろ?

教えてみさと

「はい!集中!話を書く!」

「無理だ」

「どうしてよ!?」

「……みさとがいないから」

「みさと?」

「あぁ、俺の相棒だ」

そう、この人の目に止まった作品の作者は“あまみさと”俺とみさとはペアだった

俺はストーリーをみさとはキャラを作った

俺たちだからいや、俺たちだからこそ出来た作品なんだ

「その、みさとって奴を連れてこれば書けるのね?」

「無理だ、みさとはもう連れて来れない」

「なんでそう言いきれるのかしら?」

「……土の中にいるから」

いるようなもんだ

「死んでるみたいな言い方をしないで、お兄ちゃん」頼むから来るな

「なんてタイミングが悪いんだよみさと」

「あなたがみさとさん?」

それ以上は行けない

「はい、そうですあまみさとの片方らしいです」

「らしいって?」

だめだ、それ以上は俺が、俺でなくなってしまうから、頼む辞めてくれ

途端に俺は息遣いが荒くなり呼吸困難に陥った「だい…ぶ?ね………じ……」その言葉を最後に俺は意識を手放した




俺が小説を書けない理由それは俺とみさとの過去にある

俺とみさとは双子の兄妹で何時も一緒だった

俺達は、中学に入っても一緒だった。俺達は毎日、本を読んでいた、少しでも自分たちの書く小説がいい物になるように。

この日は休日だった為朝から図書館に向かった。

あと、数メートルで着くそんな時に

暴走したトラックがみさとに向かってくるように見えた

まるで走馬灯のようにこれまで見てきたみさとの笑顔が浮かんだ

この子だけは助けなければなんだって俺の大切な妹なんだから

俺は“箕郷”を突き飛ばした

俺は意識不明の状態にみさとは意識はあるが記憶のない状態になった

気が付くと病院で、お父さんとお母さんが泣いてくれていた

俺は数ヶ月意識不明だったようだ

みさとは痣などの軽い怪我だけで済んだと医者から聞き、俺は喜んだが、医者が言うには記憶がないという箸の持ち方、歩き方、服の着方、風呂のはいり方、そして、俺を含めた家族との記憶が無いそうだ


俺は意識が戻った

「みさと!みさとは!?みさとは何処!?」

あの事が、もう一度起きてしまえば俺は俺を保てないだろう

「大丈夫よ、ここにいるわ」

峯山さんの指さす方を見るとそこには眠っているみさとがいた

「ありがとうございます、峯山さん」

「大したことはしていないわ、それよりどうして気を失ったの?」

「秘密ってことで………」




きっとみさとの記憶を戻すことも

俺たちを捨てた両親を許すことも

俺には出来ないだろう

俺は誰にも語らないだろうこの話を、この悲劇を、喜劇にされないように



━━━━━━━━━━━━━━━

作者です

ちなみにこの話は作者に全く関係ないのです

書いてみたかっただけなのでフィクションとしてお楽しみください

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