夜行

Randolph Holmes

第1話

何をしていたというわけでもないのに、下校が遅くなった。

もう十二月も中頃にさしかかっているからか、日が落ちるのが早い。

つい三十分ほど前にはあたりを明るく照らしていた太陽が、今はもう

西の山の向こうで赤く光っている。

少々急がなければ、最寄り駅につくまでに真っ暗になってしまいそうだった。


学校から最寄り駅まで3㎞。

遠いようで近く、近いようで遠い。そんな距離を毎日私は歩いて通っている。

市街地を見下ろすように連なる丘の中腹に位置する私たちの学校から駅までは、

ひたすら丘の等高線をなぞるかのように、道が続いている。

景色は良い、ただそれだけ。そんな道のりだ。


校門を出て、北へ向かう。

しばらく歩くと視界が開け、淡く赤色に染色された風景が私を出迎えてくれた。

眼下に市街地を望み、その向こうに遠い山並みを見る。

澄んだ冬の空気があたりをつつむ赤色の光と相まって、

ものの輪郭を少しだけ鮮明に見せていた。


遠くから自動車の行き交う音が聞こえてくる。まだ枝葉を残している木々が

風に揺られてそよぐ音が聞こえる。

鳥が鳴く声も聞こえるかもしれない。


そんな風景を感じながら、私は端から端へと景色を横切っていく。

唐突に強い風が吹く。

一旦去ったと思ったら、また戻ってくる。

その繰り返し。


まだまだ先は長かった。

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